2006-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ゼロインフレの政治経済学

引き続き。Thomas I.Palley、“Zero is not the Optimal Rate of Inflation”自然失業率仮説に基づけば最適なインフレ率はゼロ%であり、金融政策は自然失業率仮説の勧告に従ってゼロインフレを目標として運営されるべきだ、と多くの専門家(経済学者、エコノ…

4つのフィリップスカーブ

Thomas I.Palley、“Zero is not the Optimal Rate of Inflation(pdf)”(Thomas Palley.com(articles)より)。公平賃金仮説文献巡りの旅の途上で偶然発見したもの。 「最適なインフレ率はゼロインフレである」という主張の理論的裏付けとして自然失業率(…

オーカン法則

David Altig, Terry Fitzgerald, and Peter Rupert、“Okun's Law Revisited: Should We Worry about Low Unemployment?”。ネット上でオーカン(Arthur Okun)について調べている際に発見したもの。 The connection between unemployment and GDP growth is o…

フリードマン、グリーンスパンを語る

Economist's ViewよりM.フリードマンのWSJにおけるグリーンスパン評が届きました。“Milton Friedman: Greenspan Ruled with Discretion” http://economistsview.typepad.com/economistsview/2006/01/milton_friedman_1.html グリーンスパンによる絶妙な金融…

Friedman's Plucking Model

Economist's View(by Mark Thoma)を覗いたらフリードマンのPlucking Model関連の話題が取り上げられていた。●“New Support for Friedman's Plucking Model” http://economistsview.typepad.com/economistsview/2006/01/new_support_for.html Plucking Mode…

ケインズ革命の弊害

●Milton Friedman(1968)、“The role of Monetary Policy”(American Economic Review, Vol.58(1)) (ヴィクセルの自然利子率概念にヒントを得て)自然失業率なる概念が初登場する論文(=アメリカ経済学会会長講演)。フリードマン, カルドア, ソロー/…

現代中国と1970年代の日本

●Barry Eichengreen and Mariko Hatase,“Can a Rapidly-Growing Export-Oriented Economy Smoothly Exit an Exchange Rate Peg? Lessons for China from Japan's High-Growth Era”(日本銀行、IMES Discussion Paper Series 2005年8月) 1970年代における日…

FTPL

●土居丈朗“「物価水準の財政理論」の真意(pdf)”(土居丈朗のサイトより)。 FTPL(Fiscal Theory of the Price Level;物価水準の財政理論)は、「物価変動は貨幣的な現象ではなく財政政策による現象である」ことを主張するものである。 物価水準の財政理…

“rise and rise and rise”/“fall and fall and fall”

持ち上げるだけ持ち上げといてからその後容赦なく叩き落す。というよりも、なじるために誉めそやすと考えた方が適当か。マスコミないしはワイドショーの論法だけども、表題とはあまり、いや全く関係ない。取り上げるのは昨日出てきたヴィクセルです。 ネット…

需要は有限か

西部邁氏が先導した「出エジプト」(塩沢由典教授による命名)の動きに共鳴し反経済学の道をまっしぐらに突き進んでいたあの頃(そう昔のことではないけれども)、佐伯啓思著『「欲望」と資本主義』の以下の一節を読んで目から鱗が落ちる思いをしたものであ…

構造改革のミソ

数年前の某缶コーヒーCMだったと思うが、その中でダウンタウンの松本人志が何気なく語っていた言葉が今も記憶に残っている(松ちゃん自身が考えたかは知らないが)。 構造改革のミソはなぁ、「構造を改革する」ことにあるのであって、「改革を構造する」こと…

最後の『冬ソナ』論

田中秀臣著「最後の『冬ソナ』論」(太田出版、2005年)御多分に洩れず(?)、「冬ソナ」をはじめとする韓国ドラマ(一つも見てないかもしれない。申し訳ないですm()m)は未見でして、物語に秘められた暗示や隠喩を読み解くその見事な手綱さばきを評価する…

耐久財のディレンマ

部屋の整理をしていると森嶋通夫著『思想としての近代経済学』を発見。何気なしに読む。 思想としての近代経済学 (岩波新書)作者: 森嶋通夫出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1994/02/21メディア: 新書購入: 6人 クリック: 27回この商品を含むブログ (18件) …

出口の抜け方

7月12、13日に開催された金融政策決定会合での決定は、前回と同様当座預金残高目標を30〜35兆円に維持するとともに、俗に言う「なお書き修正」として、金融機関の「資金需要が極めて弱いと判断される場合には」残高目標の下限割れも容認する姿勢を引き継い…

非効率なナッシュ均衡に陥った日本経済

藪下史郎著『非対称情報の経済学』(光文社新書、2002年)を再読。 非対称情報の経済学―スティグリッツと新しい経済学 (光文社新書)作者: 薮下史郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2002/07/01メディア: 新書購入: 4人 クリック: 16回この商品を含むブログ (3…

自然失業率の成長循環仮説

アカロフ・中谷巌命題(=長期的にも(あるレンジの範囲内であれば)インフレと失業率のトレードオフ(=右下がりのフィリップスカーブ)が存在する)について田中先生より頂戴しました貴重なコメントを改めてエントリーさせていただきます(二度目になりま…

公平賃金仮説をたずねて 〜その2〜

George A. Akerlof, William T. Dickens, and George L. Perry、“Low Inflation or No Inflation: Should the Federal Reserve Pursue Complete Price Stability?”(August 1996;The Brookings Institutions HPより)。公平賃金仮説かつアカロフ・中谷巌命…

慣習の力

間宮陽介著『モラル・サイエンスとしての経済学』より、公平賃金仮説に関連する箇所を少しばかり引用。少なくとも短期的に見た場合、現実の貨幣価格を安定化させるのは習慣(habit)の力をおいてほかはない、と彼(=H・タウンシェンド)はいう。・・・「正常性」あ…

インフレによる損失

現実には個々の貨幣賃金の下落をもたらすことなしに、たとえば(効率性の観点から望ましいと思われる)相対賃金の変化を容易にするという点で、低率のインフレーションは、少なくとも時には実際に長所をもつことさえも認めうる。しかし、この長所自身も、そ…

公平賃金仮説をたずねて(補足)

ちょっとばかり余計な補足をば。(相対)賃金体系が公平であると感じられるためには慣習的な是認を得ている必要がある、とのことですが、これは長期間にわたる物価安定が実現されている(ないしは安定したマクロ経済環境が維持される)状況において公平な賃…

公平賃金仮説をたずねて

大部分の労働市場、そしてすべてのかなり重要な労働市場は、規則的である(=長期的、継続的な関係の上に成立している、という意味;引用者注)。さて、規則的雇用においては、単に効率という点からいっても、雇用者と被雇用者との双方が、両者の関係になに…

公平賃金仮説文献目録 〜その2〜

公平賃金仮説というか、アカロフ・中谷命題というか、(ある正のインフレ率の範囲内において)負の勾配をもつ長期フィリップスカーブについてというか、・・・とにかくウェブ上で読める(先の3つの議論に関係する)論文を集めてみました(もちろん全部読ん・…

公平賃金仮説文献目録

田中秀臣(1998)「高田保馬とJ. M. ケインズ」(上武大学商学部紀要9巻2号)田中秀臣(1998)「高田保馬の勢力経済学論争」(同10巻1号)根岸隆(1994),“Bohm-Bawerk and Shibata on Power or Market”, Discussion Paper Series(青山学院大学国際政治経…

最後のIS-LM論

IS-LM分析の生みの親として名高い(悪名高い?)ヒックス。彼がIS-LMを主題として論じたのは生涯で4回(私が知っている範囲内では)と意外と少ない。“Mr. Keynes and the Classics”/“The Classics again”(この二つの論文はともに『貨幣理論』(Critical Ess…

IS-LMの使用法

前回続き。IS-LMへの批判について。根井雅弘著『「ケインズ革命」の群像』ではIS-LMに対する2つの批判(IS-LMがケインズの重要な側面を捨象している点を問題視するもの)が取り上げられている。第一はパシネッティによるもので、IS-LMでは変数間の関係が相互…

諸々の「ケインズ革命」

根井雅弘著『「ケインズ革命」の群像』を読む。1936年以前に経済学者として生をうけていたことは幸いであった―然り。しかもあまりにも以前に生まれていなかったことが!暁に生きてあるは幸いなりされどその身若くありしは至福なるべし『一般理論』は、南海島…

既得観念としてのIS-LM

引き続きLaidlerの論文より。Many economists and some philosophers of science share what could legitimately be called Panglossian view of the losses that accompany the move towards more formal models.Kitcher(1993), for example, has argued, i…

罪深きIS-LM

David Laidler(with Roger E. Backhouse)、“What was lost with IS-LM?(pdf)”(Laidlerホームページより)。IS-LMモデルは現実経済の重要な側面−経済活動は時間を通じて行われる営為であるということ−を捨象してしまったがために、経済学の更なる発展へ…

流動性のワナ

貨幣需要の投機的動機=貨幣と「債券」(コンソル債)間の資産選択の問題、について(堀内昭義著『金融論』、p140〜144参照)。コンソル債(確定利付き債)の流通価格;P=cF/i (F:額面価格、c:クーポン率、i:利子率(最終利回り))コンソル債を1年間…

IS-LM再論

IS-LMモデルは物価一定の短期の仮定の下で、財市場と貨幣市場の均衡分析をおこなうものである。IS関係は投資=貯蓄という財市場のフロー均衡の状態を記述する。利子率の減少関数である投資と所得の増加関数である貯蓄は、財市場における所得の変動によって均…