2010-01-01から1年間の記事一覧

ミシュキン「今こそFedはインフレーションターゲットを採用すべきである」

●Frederic Mishkin, “The Fed must adopt an inflation target”(Financial Times, October 24, 2010) 先日行われたスピーチで、ベン・バーナンキFRB議長はFedに課せられたインフレーションに関する法的責務について論じた。このスピーチを受けて、マーケッ…

独立性の罠→慎重バイアス→政治の罠→???

○非伝統的な政策が失敗に終わった場合にFed(あるいは中銀)の権限が侵害されるのではないかという恐れ(独立性の罠)→失敗の過大視→慎重すぎる態度→政策当局者の"bias toward caution"→too little, too lateな政策→政策の効果出ず→マクロ経済政策(財政刺激…

なぜFedはもっと積極的な行動に打って出ないのか?

●Economics of Contempt, “Why the Fed Isn't Doing More”(Economics of Contempt, August 1, 2010) ここ数カ月の間、私はFedがもっと積極的な行動に打って出るかどうかについて懐疑的な立場をとってきたが、ダラス連銀総裁であるリチャード・フィッシャー…

総需要を刺激するためにどうして金融政策が使用されそうにないんだろうか?

●Tyler Cowen, “Why aren’t we using monetary policy to stimulate aggregate demand?”(Marginal Revolution, September 19, 2010)ニューヨークタイムズへの寄稿記事(=“Can the Fed Offer a Reason to Cheer?”)に対する補足のエントリー。この寄稿記事…

秋の夜長に不胎化介入とか非不胎化介入とかについて長々ととりとめもなくつぶやいてみる

内容はタイトル通りです。文中の「マネー」は「ベースマネー」と読み替えていただければと思いますです。 経済学には奇妙奇天烈な専門用語があるワンけど、その一つが不胎化介入、非不胎化介入ワンね。「ふたいかかいにゅう」って打っても変換されないワンも…

「アロー、シェリング、そしてFed」

●Nick Rowe, “Arrow, Schelling, and the Fed”(Worthwhile Canadian Initiative, September 1, 2010) Fedは金融緩和に乗り出すことを望んでいるのだろうか? もしFedが金融緩和を望んでいるとすれば、なぜFedは実際に金融緩和に乗り出さないのだろうか?以…

流動性選好説、貸付資金説、ニーアル・ファーガソン(オタク系)

●Paul Krugman, “Liquidity preference, loanable funds, and Niall Ferguson (wonkish)”(Paul Krugman Blog, May 2, 2009) ジョー・ノセラ(Joe Nocera)がさる木曜日に行われたイベント(このイベントには僕も参加したんだけれど、経済問題がテーマとな…

僕を困惑させるラインハート=ロゴフ

●Paul Krugman, “Reinhart And Rogoff Are Confusing Me”(Paul Krugman Blog, August 11, 2010) ラインハートとロゴフ(以下、R-R)がVOXに新しい記事を寄せている。彼らが主張するところでは、この記事の目的は「問題(あるいは主張の意味内容)をハッキ…

日本の金融政策(オタク系)

●Paul Krugman, “Japanese Monetary Policy (Wonkish)”(Paul Krugman Blog, July 30, 2010) (追記)文中で取り上げられているサムナーの論説についてはmaedaさんによる邦訳が存在する。是非ともご一読を。●“美しいモデルと不都合な事実 by Scott Sumner”…

デロング「J.S.ミル 対 ECB;ワルラスの法則で世界経済の現状を読み解く」

●J. Bradford DeLong, “John Stewart Mill vs. the European Central Bank”(Project Syndicate, July 29, 2010) 中盤以降の部分訳。 1829年のことになるが、ジョン・スチュアート・ミル(John Stuart Mill)は、彼が「一般的な(全般的な)供給過剰(“general…

金融政策の指針としてのブレイク・イーブン・インフレ率

久々のレギュラー先生のつぶやきシリーズです。「レギュラー先生お元気ですか?」との声を度々いただくことがありまして、先生の生存証明の意味も兼ねましてつぶやきシリーズを復活させてみました。つぶやきのストックはたんまりとありますので、今後も機会…

ここがヘンだよ バジョットさん

レギュラー先生のつぶやき、2連チャン。 ●“ここがヘンだよ「みんなの党」 その1 〜内実は「バラマキ」の成長戦略を斬る〜”(本石町探偵団(JBPress), 2010年07月23日) 中小企業向けローン債権の買い取りは銀行による審査基準を緩めることにつながり、その…

高失業の永続化

●Paul Krugman, “Permanently High Unemployment”(Paul Krugman Blog, July 26, 2010) デロング(Brad DeLong)がマンキュー(Greg Mankiw)に対して以下のようなコメントを寄せている。 マンキューの議論の大まかなポイントをまとめると以下のようになる…

ギャグノン ギャニオン「今こそ金融刺激の時」

●Joseph E. Gagnon, “Time for a Monetary Boost”(The Huffington Post, July 21, 2010) keiseisaiminの日記(“ギャグノンによるFedがすべきこと。”)経由。(追記)Gagnonの表記を「ギャグノン」から「ギャニオン」に変更。コメント欄でのご指摘による。…

公的債務についてドイツが知っていること

●Tyler Cowen, “What Germany knows about debt”(Marginal Revolution, July 18, 2010)NYTに寄稿された記事への補足。night_in_tunisiaさんによる邦訳も参照のこと。NYTの記事からの引用部分の訳については、night_in_tunisiaさんの訳を利用させていただい…

追加的な財政刺激をプッシュして絶望させられる僕

●Paul Krugman, “More Stimulus Despair”(Paul Krugman Blog, July 18, 2010) 今日はちょっと率直に語らせてもらおうと思う。この1年半ぐらいの間、財政刺激策をめぐって議論してきたけど、その過程において僕は経済学の現状にすっかり絶望させられること…

M.ソーマ 「インフレとデフレ、どちらの心配をすべきか?」

●Mark Thoma, “Should You Be Worried About Inflation? What About Deflation?”(moneywatch.com, July 13, 2010) 中央銀行であるFedが経済刺激策―銀行システムに対して大量の新規貨幣を(準備預金のかたちで)注入しようとする試み―に打って出ようとする…

学習性無力感に囚われたマクロ経済学

●Paul Krugman, “Learned Helplessness In Macro”(Paul Krugman Blog, June 29, 2010) マーク・ソーマ(Mark Thoma)とブラッド・デロング(Brad DeLong)がそれぞれ自分のブログでジェームス・モーリー(James Morley)の現代マクロ経済学批判(pdf)を取…

ケインズも仰せのように「長期的にみると、我々はみな死んでしまう」んだよ

●Paul Krugman, "In The Long Run, We Are Still All Dead"(Paul Krugman Blog, June 25, 2010) Mohamed El-Erianの記事を読んだんだけど、彼が一体何を言わんとしているのか理解しかねてちょっと当惑してしまっている。彼が推奨しようとしている政策は正…

M.トーマ(or ソーマ)「成長政策 vs 安定化政策」

●Mark Thoma, “Growth Policy versus Stabilization Policy”(moneywatch.com, May 25, 2010)訳せという声がどこからともなく聞こえてきたような気がしたので、訳してみました。 他の学問分野(disciplines)においてもそうだろうが、経済学においても、そ…

バーナンキ講演「中央銀行の独立性,透明性,説明責任」:「透明性と説明責任」部分

バーナンキの講演を訳せという声が聞こえてきたので、「透明性と説明責任」の節だけ訳してみました(導入部分はoptical_frogさんが、結論部分はWASSHOIさんが、それぞれ訳されています)。あとは任せた。(追記)night_in_tunisiaさんが訳(残りあと一節のよ…

岡田靖「小幅で頑固な日本のデフレーションは問題か?」

●Yasushi Okada(2006), “Is the Persistence of Japan’s Low Rate of Deflation a Problem?(pdf)”(prepared for ESRI国際コンファレンス:「“失われた10年”における日本経済の変貌と回復」, 東京, September 14, 2006;同じ訳をこちらにもアップ) <…

岡田靖先生、安らかに

既にご存知の方もおられることでしょうが、岡田靖内閣府経済社会研究所主任研究官が4月10日の晩にお亡くなりになられました。 twitter上で突然の訃報に触れ、頭が真っ白でいまだにその事実を受け止めることができないでいます。 今年の年明け頃に生死の境を…

クルーグマン「スタグフレーション vs ハイパーインフレーション」

●Paul Krugman, “Stagflation Versus Hyperinflation”(Paul Krugman Blog, March 18, 2010)どこからともなくこのコラムを訳すよう促す天の声が聞こえてきたような気がしたので訳してみた。ただし、このコラムに関しては既にoptical_frogさんによる素晴らし…

Jeanne and Svensson「流動性の罠からの脱却のための信認ある確約」AER 2007

●Olivier Jeanne and Lars E. O. Svensson, “Credible Commitment to Optimal Escape from a Liquidity Trap: The Role of the Balance Sheet of an Independent Central Bank”(American Economic Review, Vol. 97, No. 1 (March, 2007), pp.474-490;一部…

シュンペーターは現在の危機をどう見るだろうか

●Barry Eichengreen(2010), “The Crisis in Financial Innovation(pdf)”(Lecture given on receipt of the Schumpter Prize of the International Schumpeter Society, Vienna, January 20, 2010) 一部訳(pp.1〜pp.3)。余裕があれば全部訳すかもしれ…

経済学の基本原理;あいうえお作文風にまとめてみると

●“ECONOMICS!!”(Greg Mankiw's Blog, January 29, 2010) Ten Key Principles in Economics(経済学における十大原理)Everything has a cost. There is no free lunch. There is always a trade-off. (すべての選択にはなにがしかのコストが伴う。フリー…

大停滞と大不況

●Peter Temin(2010), “The Great Recession and the Great Depression”(NBER Working Paper No. 15645, January 2010) Abstract;This paper discusses parallels between our current recession and the Great Depression for the intelligent general …

消費器官としてのマインド;一つの例

レギュラー先生、欲求不満なんでしょうか。・・・ちょっと心配です。 最近はめっきりご無沙汰なんだワンけど、いわゆるセクシー女優が出演している映像媒体の購入から得られる便益の多くは、購入するまでに得られるワクワク感(process utilityとか表現した…

「レトリックなきロジックは○○であり、ロジックなきレトリックは××である」

twitter上で「政策提言の場において自らの主張が受け入れられるためには、ロジックもさることながらレトリックもそれなりに必要ですよね」という話題に話が及んだ。そこからこの点を「レトリックなきロジックは○○であり、ロジックなきレトリックは××である」…