2012-01-01から1年間の記事一覧

どマクロの世界では期待インフレ率の上昇はどのような効果を持つか?

今日もまた例の彼とランチ。いつにもましてのマシンガントークだったけれども、突然ナプキンの裏に何か図を描き出すものだから、「もしや新しい経済学が誕生する瞬間に立ち会っているのか」・・・と一瞬緊張してもみたり。 IS-LMとかAD-ASとかいった「どマク…

目標間のトレードオフとか修正エヴァンズ・ルールとか

どうでもいい前置きは抜きにしますが、例の友人とランチに行ってきました。毎度のごとく一方的に語っていただきました。 アルティグさん、何だか苛立ってるみたいだね。●Dave Altig, “Try, Try Again”(macroblog, December 21, 2012)今回のFOMCの決定をイ…

大きな謎ともっと大きな謎

ちょっとした買い物をするためにバスに乗っていたところ、前の席に座っていた2人の男性がおおむね次のような会話をしていた。徹夜明けでちょっと眠たかったんで、ところどころ記憶違いがあるかもしれない。 X氏:「ちょっと聞いてほしいんだけど、僕にはよく…

「NGDPLT! NGDPLT!」

●Jeffrey Frankel, “Time for Nominal Growth Targets”(Project Syndicate, December 16, 2012) erickqchanさんとtmpsoulcageさんのつぶやき経由。「インフレ目標の死 by Jeffrey Frankel」(erickqchanさん訳)とあわせて読むと吉。以下は抜粋訳(ちなみ…

Garett Jones 「研究のインセンティブ 〜みすぼらしいパフォーマンスと世間からの高い評判〜」

●Garett Jones, “Research Incentives: Milton Friedman on the Fed”(EconLog, December 11, 2012) カネ(金銭的なインセンティブ)は研究の結果に影響を与えるのだろうか? 医薬品の研究・開発をめぐってこの質問が問われることはよくあるが、この質問は…

Garett Jones 「最も粘着的な価格、その名は「債務」」

●Garett Jones, “Debt: The Stickiest Price of All”(EconLog, September 11, 2012) 名目支出の減少はどのようにして実体経済に害を及ぼし得るのだろうか? この問題をめぐって経済学者は数多くのストーリーを語る。いや、語らざるを得ないのだ。名目支出…

Marcus Nunes 「カーニーの「改宗」? 〜常態としてのNGDP-LT〜」

●Marcus Nunes, “NGDP-LT: “A target for all seasons””(Historinhas, December 12, 2012) ナバラ王(King of Navarre)からフランス王(King of France)への「昇格」(‘upgrade’)を果たすためにカトリックに改宗するにあたって、アンリ4世(Henry IV)…

スコット・サムナー「カナダからの爆弾発言 〜カーニー、NGDP水準目標を支持〜」

●Scott Sumner, “Extremely Worthwhile Canadian Initiative”(TheMoneyIllusion, December 11, 2012) JimPがテレグラフの非常に興味深い記事を私宛に送ってくれた。 カナダ中銀の現総裁であり、来年の6月にイングランド銀行総裁の座をマーヴィン・キングか…

NAIRUとヒステレシス

個人的なメモ用としてスティグリッツの1997年のJEP論文 “Reflections on the Natural Rate Hypothesis”(Journal of Economic Perspectives, Vol.11(1), pp.3-10)を眺めていて興味をひかれた箇所を突貫訳してみる。 人口構成の変化やwage aspiration effe…

Neil Irwin 「Fedから届いた大ニュース」

●Neil Irwin, “Huge news out of the Federal Reserve”(Wonkblog, December 12, 2012) 本日の午後、Fedの政策当局者によってどでかいサプライズが披露された。ゼロ金利解除の基準(金利引き上げの条件)となるインフレ率と失業率の具体的な数値が明らかに…

ローレンス・ボール「Fedの決定を解釈する」

●Laurence Ball, “Interpreting the Fed”(Greg Mankiw's Blog, December 13, 2012) 友人でもあり論文の共著者の一人でもあるローレンス・ボール(Laurence Ball)から今回のFedの決定に関する素早い分析がメールで送られてきたので以下に転載する。今回のF…

「ウッドフォードに聞く 〜FOMCの新たな決定を受けて〜」

●Zachary A. Goldfarb, “Michael Woodford on the new Fed policy”(Wonkblog, December 12, 2012) さる8月のジャクソンホールシンポジウムにおいてマイケル・ウッドフォード(Michael Woodford)―コロンビア大学に籍を置く経済学者であり、貨幣理論の指導…

James Hamilton 「1兆ドルのプラチナイーグルコイン」

●James Hamilton, “Trillion dollar platinum coin”(Econbrowser, December 8, 2012) アメリカ議会が債務上限の引き上げを拒否した場合、オバマ大統領はどのような手に打って出ることができるだろうか? オバマ大統領が採り得る手段として様々な提案がまこ…

Matthew Yglesias 「プラチナコインの抜け穴」

●Matthew Yglesias, “The Rooseveltian Precent For Exploiting The Platinum Coin Loophole”(MoneyBoX, December 7, 2012)ハミルトン(James Hamilton)のエントリーとあわせてどうぞ。 その素材がプラチナである限りにおいて財務長官は新しい法貨をいく…

「中央銀行の独立性」とか「アイデアの政治経済学」とか

特段仲が悪いわけでもないのになかなか都合があわずに1〜2年まったく顔を合わせないことがあるかと思うと、ちょっとしたきっかけで頻繁に顔を合わすようになって連日のようにランチをともにしたり、という経験はままあるものです。そうです。一方的に喋りま…

「外からのレジーム転換」と「内からのレジーム転換」

このブログでも以前一度だけ登場したことのある知人と昨日久しぶりに会ってランチ。その時の会話の様子を再現してみる(といっても、彼が一方的に喋っていたわけだけど)。 ベックワースの「マネタリー・スーパーパワー仮説」(http://d.hatena.ne.jp/Hicksi…

ロバート・フランク 「ミルトン・フリードマンの別の顔;社会福祉プログラムの改善に向けて」

●Robert H. Frank, “The Other Milton Friedman: A Conservative With a Social Welfare Program”(New York Times, November 23, 2006)日付にご注意(2006年11月23日付けの記事)。 先週94歳でこの世を去ったミルトン・フリードマン(Milton Friedman)と…

クリスティーナ・ローマー「為替レートに関する率直な議論を求む」

●Christina D. Romer, “Needed: Plain Talk About the Dollar”(New York Times, May 21, 2011)日付に注意されたい(2011年5月21日付の記事)。 最近開催されたコンファレンスでベン・バーナンキ(Ben S. Bernanke)FRB議長は最近のドル安傾向について意見…

「デレバレッジ・ショックと財政乗数」

●Paul Krugman, “Deleveraging Shocks and the Multiplier (Sort of Wonkish)”(The Conscience of a Liberal, October 9, 2012) ジョナサン・ポルテス(Jonathan Portes)−来週ロンドンで行われる予定の財政政策に関する討論の場では私と彼とは共同戦線を…

Antonio Fatás 「過小評価された財政乗数」

●Antonio Fatás, “Underestimating Fiscal Policy Multipliers”(Antonio Fatas and Ilian Mihov on the Global Economy, October 8, 2012) この度発表されたばかりのIMFの世界経済見通し(IMF World Economic Outlook)では世界経済の回復を鈍化させるリス…

「バーナンキvs.Fedボーグ」

●Matthew O'Brien, “Bernanke vs. the Borg: A Short History of the Fed's Amazing Transformation”(The Atlantic, October 1, 2012)Macro and Other Market Musings経由。Fedボーグに取り込まれたかに見えたバーナンキ議長は実のところはバーナンキ教授…

Michael Bordo「通念を疑う〜金融危機を伴う景気後退の後に続くのは弱々しい景気回復か?〜」

●Michael Bordo, “Financial Recessions Don't Lead to Weak Recoveries”(Wall Street Journal, September 27, 2012)Historinhas経由。 金融危機を伴う景気循環の方が金融危機を伴わないそれよりもプラッキングモデルの当てはまりがいい(=景気後退の度合…

「量的緩和は有効です−やり方次第では」

●Adam Posen, “The Use and Limits of Monetary Policy”(at the China-US Economists Symposium, China Finance 40 Forum, May 8, 2012)「アダム・ポーゼンが「量的緩和は無効だ」と認めた」との噂を耳にしたのだけれど、↑の論説によると・・・あれ?(本…

「ザ・日銀の番人」の新著を購入

日本銀行が「デフレの番人」だとすれば、そのような日銀の「デフレの番人」ぶりを長きにわたり厳しく批判し続けてこられた岩田規久男氏は「日銀の番人」(言い換えれば、『「デフレの番人」の番人』)だと言えよう。日本銀行デフレの番人 日経プレミアシリー…

ローマー夫妻の講義「マクロ経済政策を学ぶ 〜大恐慌から大不況まで〜」

Econ 134: Macroeconomic Policy from the Great Depression to the Great Recession(Instructors: Christina Romer and David Romer,Spring 2012) 講義スライドを眺めるだけでも勉強になる(例えば、「Lecture 12:The Zero Lower Bound in Practice(pd…

タバロック「正義の成長と経済の成長」

●Alex Tabarrok, “The Growth of Justice”(Marginal Revolution, May 9, 2012) 正義(Justice)は経済の成長にとって重要な要素の一つである。自らの生命や自由、財産が恣意的に(自らの意思に反して)略奪されたり破壊されたりするかもしれないと内心ビク…

ポーゼンへのインタビュー:「金利が低いのは嫌だ、と感じるかもしれませんが、私の母親のように退職後に貯蓄を投資に回して生計を立てている人々にとって、もし金利が現在のように低い水準にまで引き下げられていなかったとしたら状況はずっとずっと悪いものとなっていたことでしょう。」

●“Posen: Millions of Europeans face long slog”(CNNMoney, interviewd by Kim Clark, May 9, 2012) 個人的に興味をひかれた箇所を抜粋して訳してみました。 質問:アメリカにおいてもそうですが、イギリスやヨーロッパにおいても、財政赤字の問題をめぐ…

「バーナンキの自己評価を検証する;1999年のバーナンキと2012年のバーナンキ」

●Brad DeLong, “Assessing Ben Bernanke's Claims That He Has Not Changed His Mind since 1999 on the Power and Desirability of Expansionary Monetary Policy at the Zero Lower Bound”(Grasping Reality with the Invisible Hand, April 26, 2012) …

ロドリック「アイデアと利害 〜利害を形作るアイデア〜」

●Dani Rodrik, “Ideas over Interests”(Project Syndicate, April 26, 2012) Interests are not fixed or predetermined. They are themselves shaped by ideas – beliefs about who we are, what we are trying to achieve, and how the world works. Our…

大恐慌に関するケインズ以前の貨幣理論 〜ホートレーとカッセルはなぜ無視されたのか?〜

●Ronald Batchelder and David Glasner, “Pre-Keynesian Monetary Theories of the Great Depression: What Ever Happened to Hawtrey and Cassel?” Abstract: A strictly monetary theory of the Great Depression is generally thought to have originated…