バーナンキ講演「中央銀行の独立性,透明性,説明責任」:「透明性と説明責任」部分


バーナンキの講演を訳せという声が聞こえてきたので、「透明性と説明責任」の節だけ訳してみました(導入部分はoptical_frogさんが、結論部分はWASSHOIさんが、それぞれ訳されています)。あとは任せた。

(追記)night_in_tunisiaさんが訳(残りあと一節のようです)を一か所に集約してくださっています(night_in_tunisiaさん自身も訳されてます)。FT誌に掲載された講演後のバーナンキのインタビューもnight_in_tunisiaさんが訳してくださっていますので、そちらも是非ともご覧あれ。

透明性と説明責任(Transparency and Accountability)

中央銀行の独立性は重要ではあるが、先にも触れたように、中央銀行の独立性は無条件で認められるものではない。民主主義の原則は、政府の代理人(agent)という立場に置かれている中央銀行に対して以下のことを要求する。つまり、中央銀行は、政府によって課された目標を追求する過程において説明責任を果たさねばならず、国民や政治家(選挙を通じて選ばれた国民の代表)の声に敏感であらねばならず、政策決定プロセスの透明性を確保しなければならない。特に金融政策決定プロセスにおける透明性は、中央銀行の説明責任の一層の向上に役立つだけではなく、金融政策の有効性を高めることにもつながる。将来的な政策方針や中央銀行のあり得る反応(様々な経済状況に対して中央銀行が政策的にどのような反応を見せるか)に関して透明性が高まることになれば、政策にまつわる不確実性が低減することになり、また、家計や企業が中央銀行の行動を予測しやすくなることで、金融政策が長期金利に及ぼす影響力が高まることになるからである。そして、透明性の向上と(それに伴う)不確実性の低減とは、経済成長やインフレーションに対する中央銀行の影響力を高めることになるだろう。

これまで長年にわたって、我々FRBは−世界各国の多くの中央銀行と同じように−金融政策運営上の透明性と説明責任とを高めるために様々な重要な手段を講じてきた。我々金融政策の当局者は、折に触れて、経済状況や今後の政策見通しに関してスピーチを行ったり、議会で証言をしており、また、特に我々FRBは、マクロ経済や金融政策の問題を広範に取り扱ったレポート(Monetary Policy Report to the Congress)を年2回にわたって議会に提出している。FOMC連邦公開市場委員会)―FRBの金融政策の方針を決定する意思決定会合―は、会合後(FOMC開催最終日の後)に声明文―声明文には、意思決定内容の説明と政策委員の投票状況が記載されている―を発表しており、FOMC開催最終日の3週間後には議事要旨(minutes)を公表し、議事要旨の公表から少し遅れて完全な議事録(full meeting transcripts)を公表している。さらには、FOMCは、参加メンバーの主要な経済指標に関する4半期ごとの見通しの要約を発表しており、最近では、これら主要な経済指標の(4半期よりも長めの)長期的な予測経路に関する委員メンバーの評価も発表している。FOMCが提供しているこれらの情報は、「Fedウォッチャー」―金融政策のあらゆる側面を仔細に分析する人々―に対してかなりの判断材料を与えていることだろう。

金融危機に対処する過程において、FRBは、伝統的な金融政策に加えて、新たな政策手段の採用にも踏み込むことになったが、FRBはこれら新たな政策手段に関しても幅広く情報を提供してきた。例えば、FRBは、自らのバランシートの状態や流動性供給のために特別に設けられたファシリティーに関する詳細な情報を定期的に公表しており、さらには、ウェブサイト上にそれ用(バランシートの状態や流動性供給のために特別に設けられたファシリティーに関する情報を提供するため)の特別な場所を設け、月ごとのレポートも作成している。我々FRBは、金融政策に課された目標や金融システムの安定性を損なうことなしに、政策決定プロセスの透明性をさらに一段と高める手段はないかと現在も模索しているところである。