秋の夜長に不胎化介入とか非不胎化介入とかについて長々ととりとめもなくつぶやいてみる


内容はタイトル通りです。文中の「マネー」は「ベースマネー」と読み替えていただければと思いますです。

経済学には奇妙奇天烈な専門用語があるワンけど、その一つが不胎化介入、非不胎化介入ワンね。「ふたいかかいにゅう」って打っても変換されないワンもんね。

非不胎化介入なんて「非」と「不」って否定が連続してるのもややこしいワンけど、非不胎化介入って何もしない(=日銀が政府の為替介入に伴うマネーの変化を相殺しないで放置する)ことワンから「介入」っていうのもしっくりこないワンね。

何もしないことも一つの行為と見なすとするなら、介入っていうのもありかもしれないワンけど。

ただ円高が進行する現状を前にして、日銀に対して非不胎化介入を要求する際には注意が必要ワンね。

伝統的には非不胎化介入っていうと、政府による為替介入の結果市中のマネーが増加した際にそれを放置する(売りオペでマネーの吸収をしない)ことを意味していたワンけど、政府による為替介入が市中のマネー増加につながる必然性はないワンね。

政府が為替介入する際にはそのための資金を調達するために外為証券 or 政府短期証券(=FB)っていうのを発行するワンけど、この証券を誰が買うかが問題ワンね。FBの買い手が日銀の場合は、為替介入の結果として市中のマネーは増加するワンけど、民間の経済主体(投資家や銀行etc)が買い手の場合は市中のマネーの量は変化しないワン。

かつてはFBの買い手は日銀だったワンけど、最近では民間の経済主体が買い手(=市中で消化されている)ワンね。

ということは、FBが市中で消化されている現状では、日銀が特段行動を起こさなければ為替介入の結果として市中のマネーは変化しない(=自動的な不胎化)ということになるワンね。

かつての(日銀がFBを購入しているケースにおいては)非不胎化介入は、日銀は金融引き締めするなってことを意味してたワンね。政府の為替介入に伴って日銀が金融引き締め(売りオペ)しないことで結果として金融が緩和されることになるワンね。非不胎化介入=政府の為替介入に伴う金融緩和という意味で使用するなら、FBが市中で消化されている現状では、非不胎化介入=日銀は買いオペ等を通じて金融緩和せよ、ってことを意味することになるワンね。ややこしいワンけど。

こんな感じで厄介な話ワンから、無理矢理「日銀は非不胎化介入せよ」って言うんじゃなくて、「政府の為替介入と同時に日銀は更なる金融緩和に乗り出せ」って言った方がいいかもしれないワンね。

日銀がFBを購入するとすれば、非不胎化介入せよっていうのも従来通りの意味で(つまりは日銀は為替介入に伴う市中のマネーの増加を相殺するような売りオペをするなという意味で)通用することになるワンけどね。

①政府がFB発行→民間の経済主体が購入;市中のマネーが減少(市中から政府へとマネーが移動)、②政府はFBの売却によって得たマネー(円)を市中でドルと交換;市中のマネー増加、市中のドル減少、③政府は円と引き換えに得たドルで財務省証券(Tビル)を購入;市中におけるドル増加

FBを購入するのが民間の経済主体の場合、①で一旦市中から吸収されたマネーが②で再度市中に戻されることになるワンからマネー(円)の量は変わらないワンね。あと②で一旦市中から吸収されたドルが③で市中に再度戻るから市中のドルの量も変わらないワンね。

変化するのは市中におけるFBの量と財務省証券(Tビル)の量ワンね。為替介入の結果、市中におけるFBの量が増えて財務省証券(Tビル)の量が減ってるワン。

FBを購入するのが民間の経済主体の場合、日銀が特別行動を起こさない限りはマネーの総量は変わらないワンけど、円やドルの所有者が変わる(円、ドルといった貨幣の分配が変わる)ワンし、市中におけるFBの量が増えて財務省証券の量が減少するワンから、最終的にどういう効果が表れるかは何とも言えないワンね。

というのも、為替介入の結果として民間の経済主体の資産構成が変化することになるワンから、バランスシート上の資産構成の変化を受けて民間の経済主体が資産の組み換えに及ぶとすれば(ポートフォリオリバランス効果を通じて)資産価格(為替レートも含む)に影響が生じる可能性もあるワン。

為替介入の最終的な結果はポートフォリオ上の資産構成が変化した経済主体がどう行動するかに依存するってことワンね。

①では元々円を所有していた経済主体が新たにFBを購入することになるワンから、この経済主体のポートフォリオ上では円が減ってFBが増えることになるワンね。

②では元々ドルを所有していた経済主体が新たに円を手にすることになるワンね。この経済主体のポートフォリオ上ではドルが減少して円が増加することになるワン。

③では元々財務省証券(Tビル)を所有していた経済主体が新たにドルを手にすることになるワン。この経済主体のポートフォリオ上では財務省証券が減少してドルが増加することになるワン。

これらポートフォリオ上における資産の内訳(構成)が変化した経済主体が何の行動も起こさなければそれでおしまいワンけど、彼らが資産の組み換えに及ぶとすると資産価格への波及効果が生じることになるワンね。

その過程で民間の銀行が債券投資や貸出にヨリ積極的になったりすれば、インターバンク市場なんかにも影響が及ぶ可能性もあるワンね。

(民間の銀行による債券投資や貸出の増加を受けて)準備預金に対する需要が増えればコール金利なんかに上昇圧力かかるワンから、日銀がゼロ金利政策を維持するつもりであれば、準備預金の供給を増やさなければならない(=ベースマネーが増加する)ということになるワンね。

そういうわけで、FBを購入するのが民間の経済主体のケースに関しては、政府による為替介入の一時的な効果だけを見れば、為替介入の結果として市中のマネー量は変化しないってことになるワンけど、最終的な効果についてはどうなるかわからないワン。

民間の経済主体の資産選択行動次第では、最終的に市中におけるマネー増加につながる可能性(コール金利をゼロに維持するために日銀が準備預金の供給を増やさなければならないということになれば)もあるワン。


(追記)以下のエントリーも参照。

●jimuyakagyo, “為替介入による金融緩和―『日本経済のウソ』を読む(2)”(明暗、2010年9月15日)