強力な金融緩和効果を秘めた「資産」?


1月1日になった瞬間に例の友人から電話。年賀状出すの面倒臭いから電話で済まそうと思って、とのこと。ガキ使を見ながらの電話だったので会話の内容をどこまで正確に覚えているかは自信はないけれど、記憶している範囲で再現してみよう。

あけおめだよね。それにしてもフフフだよね。不敵な笑みが自然とこみ上げてきちゃうよね。

というのも、極めて強力な金融緩和効果を秘めていながらも中銀のバランスシートを一切危険にさらすことのない資産を見つけてしまったからだよね。

ゼロ下限制約下においては通常金融政策(公開市場操作)で売買の対象となる短期国債を購入したところで大した効果は期待できない。というのも、同じ資産(貨幣と金利ゼロの短期国債)を単に交換しているに過ぎないからだ。ゼロ下限制約下において金融政策が効果を持つためには、貨幣との代替性が低い資産、例えば、満期がもっと長めの国債や民間の証券(REIT不動産投資信託)など)といったリスク資産、さらにはケチャップなどの財をも購入対象に含めるべきだ。・・・といった議論はよく目にするところだよね。

さらには、期待こそが重要だ、という議論もあるよね。ゼロ下限制約下において金融政策が効果を持つには、将来においても金融緩和スタンスが継続されるとの期待を生みだすことこそが重要だ、という議論だよね。

「資産」とか「購入する」とかいった表現は適当ではないかもしれないけれど、極めて強力な金融緩和効果を秘めていながらも中銀のバランスシートを一切危険にさらすことのない「資産」、それは「優れた中銀総裁」だよね。「優れた中銀総裁」という「資産」を「購入する」=高い給料を支払ってでも国内外問わずに優れた資質の持ち主*1を新しい中央銀行総裁として迎え入れる、ってことだよね。

その(「優れた中銀総裁」という)「資産」の中でもお勧めは「スコット・サムナー」という「資産」だよね。というのも、この資産の購入は、将来においても金融緩和スタンスが継続されるとの期待の形成につながる可能性があるからだよね(「スコット・サムナー」という「資産」の購入は将来における金融緩和に対するコミットメントの手段である、とも言えるかもしれないよね)。彼(スコット・サムナー)が常日頃から主張していること(例えば、こちらこちらこちらを参照)を中銀総裁としてそのまま実行する可能性が高いと広く信じられるようであれば*2、「スコット・サムナー」という資産の購入が決まった段階で(サムナーが次期総裁に就任する旨が決定した段階で)、中銀のバランスシートは一切拡大していない(ベースマネーは増えていない)のに極めて強力な金融緩和効果が表れる可能性があるよね。次期首相候補が金融緩和に積極的というだけで金融緩和効果が表れる可能性があるとすれば、次期中銀総裁が金融緩和に前向きということになればその効果たるやいかんだよね。「期待が大事」という点を知らしめる上では「スコット・サムナー」という資産に勝るものはないよね。

他にも、「岩田規久男」(例えば、こちら(pdf)を参照)・「アダム・ポーゼン」(例えば、こちらこちらを参照)・「ポール・クルーグマン」(例えば、こちらこちらを参照)・「クリスティーナ・ローマー」(例えば、アメリカについてだけれどこちらを参照)など魅力的な「資産」(次期中央銀行総裁候補)は豊富に存在するよね。リスク資産だけではなく「優れた中銀総裁」という「資産」にも目を向けるべきなのかもしれないよね。


電話が切れた後、「あわせて次の記事も参照してほしいよね」、と彼からメールが届いた。以下にそのリンクを貼っておこう。ちなみに、O'Brienの記事の内容についてはかつてhimaginaryさんが紹介されている(「日銀は白い呪術師を必要としているか?」)のでそちらも参照のこと。

●Matthew O'Brien, “How Much Is a Good Central Banker Worth?”(The Atlantic, April 19, 2012)

●Richard S. Grossman, “Wanted: Central Banker”(Unsettled Account, October 25, 2012)

●Ryan Avent, “Taking his talents to London”(Free exchange, November 26, 2012)

*1:中央銀行総裁として適当なhuman capital(人的資本)を備えた人物、とも表現できよう。human capitalという観点に立つと、「優れた中銀総裁」=「資産」、と見なすことはそれほど無理のないものとなろう。

*2:あくまでも金融政策は合議制で決定されるものであって、総裁にその決定が一任されるわけではない、という点は注意。政策委員会のメンバー間でコンセンサスを得るために総裁がある程度妥協するという可能性もある。また、総裁が望むような政策を実施するためには法改正が必要となる場合は、政府がどう対応するか(政府側が総裁の望みを素直に受け入れるかどうか)が関わってくることになる。