グローバリゼーション反対の理由 〜自己利益と・・・〜


●Tyler Cowen, “Culture in the Global Economy(pdf)”(The 2000 Hans L Zetterberg Lecture, City University Press

以下、pp.48〜49より抜粋訳。

質問:多くの人々がグローバリゼーションに反対する理由はグローバリゼーション(≒貿易の自由化)の進展によって自らの経済的な利益が損なわれることになるからではないのでしょうか?

コーエン:その指摘には私も同意するところですが、ただそれだけではパズルが解決されることになるとは思いません。確かに多くの人々は自己利益に基づいてグローバリゼーションに反対しています。しかし、グローバリゼーションに反対する多くの人々の中には学者も含まれています。彼ら学者はテニュア(終身在職権)を持っており、収入も固定(安定)しています。核による大虐殺なんかが起これば別ですが、そうでなければどんなことが起ころうと(グローバリゼーションが進展しようがしまいが;訳者挿入)彼らの状況は変わりません。彼ら学者はグローバリゼーションを巡る問題について真剣に考えています。彼らの多くは思慮に富んでおり誠実でもあります。そしてそんな彼らはグローバリゼーションのことがお嫌いなようです。どうして彼らは(グローバリゼーションの行方次第で自らの経済的な利害が左右されるわけでもないのに;訳者挿入)グローバリゼーションに反対するのでしょうか? 多くの人々が自己利益に基づいてグローバリゼーションに反対しているのは事実だとしても、(グローバリゼーションに反対する)それ以外の理由もあるのではないかと私には思えるのです。そしてグローバリゼーションへの反対が強固なものとなるのは、自己利益に基づく反対と道徳的ないしは感情的な反発とが手を取り合う時なのです。多くの人々をしてグローバリゼーションへの反対に向かわせている自己利益以外の要因についてもっと深く理解する必要があるのではないかと私は考えています。


(追記)「多くの人々をしてグローバリゼーションへの反対に向かわせている自己利益以外の要因」の一つとしては、文化ないしは伝統の保存といった要因を挙げることができるかもしれない。つまりは、グローバリゼーションは各国に固有の(あるいは独自の)文化を破壊し、文化間の同質化を迫るものであり、我が国固有の文化を守るためにもグローバリゼーションの流れに抗う必要がある、という反対論である。このような反グローバリゼーションに対する反論としてはコーエンの以下の本をお勧めする。

創造的破壊――グローバル文化経済学とコンテンツ産業

創造的破壊――グローバル文化経済学とコンテンツ産業