Marcus Nunes 「日本で今何が起こっているのか? 〜予想インフレ率の気になる急落〜」


●Marcus Nunes, “A visual take on Japan”(Historinhas, June 4, 2013)

直近のエントリー(訳注;sowerberryさんによる邦訳はこちら)でラルス・クリステンセンが次のように語っている。

ここのところ日本では予想インフレ率が低下しているわけだが、その主たる理由は長期金利(長期国債の名目利回り)の上昇に対する日銀のあべこべな対応にあると私は考える。

日本銀行幹部―黒田総裁も含む―の発言から判断するに、どうやら日本銀行は不可能な試みに乗り出そうとしているようである。つまりは、長期名目金利の上昇をもたらすことなしに金融緩和を進めようとしているようなのだ。日銀がそのような姿勢をとっているために日本銀行の目標をめぐって混乱がもたらされる格好となっており、その結果として予想インフレ率の急落が引き起こされているのである。

クリステンセンの主張は実際のデータによって裏付けられている。以下に掲げる3つの図では、予想インフレ率の推移(I.E;青線)とあわせて、名目為替レート(円ドルレート)の推移(1番目の図/FX;赤色の点線)、日経平均株価の推移(2番目の図/Nikkei;紫色の点線)、10年物国債の利回りの推移(3番目の図/10 year Bond;緑色の点線)がそれぞれ描かれている。

以下の図によると、予想インフレ率がその他の指標の変化を促す(状況の変化に向けたプロセスを始動させる)役割を果たしているように見えるが、2%のインフレ目標の採用と安倍政権の(当初の)高い信頼性を考えるとそれも当然と言えるだろう。

しかしながら、5月9日以降に長期名目金利が急上昇するや、状況にぐらつき(‘wobbly’)が見られる点には注意が必要である。長期国債の利回りは依然低い水準にとどまっており、ここのところは低下傾向にあるが、全般的に見て長期金利の動きは順風満帆(‘smooth sailing’)といった調子である。日銀には次のことを望みたいものだ。まずは日銀の目標が何であるかを明らかにして(視界を晴らして ‘clarifies’)ほしい。そして、量的緩和(に類似した戦略)の目標は長期名目金利を引き下げることだ、との伝統的な見解(量的緩和の航海に乗り出す度にバーナンキが誤って陥った見解)から脱却してもらいたい。


黒田総裁にお願いである。再び力強く漕ぎ出してくれ(please start‘rowing’ vigorously again!)。