ヒックスとデムゼッツとルーカス
久しぶりのヒックスネタ。
『資本と成長 Ⅰ』(邦訳、pp.16)より引用。Demsetzによるnirvana approachへの批判*1あるいはCoaseによるblackboard economics批判*2との類似性を見よ。
経済学者がみずからの「厚生」ルールを設定し、そして(もしできるなら)現存の組織がそれらのルールを満たさないということを明らかにしたとき、彼の仕事はまだそこで終ったわけではない。なぜなら彼は、たんにそれだけの根拠にもとづいて、現存の組織を批判する権利はもちえないからである。いままでに判明しているかぎりでは、現存の組織より「もっとよく」欲望を満足させるような組織、もっと最適状態に近い組織で、実現可能なものは存在しないかもしれないのである。したがって批判が根拠あるものになるためには、この点の期待に応じうるような実現可能な組織が他に存在することを示すのでなくてはならない。
もう一つ引用(pp.17,注)。
序ながら、われわれが論じてきたような計量経済学の性質―つまりその理論が応用理論であって、純粋理論ではないという性質―が、なぜ計量経済学が「見通し」(原語はprojections;引用者注)とか「予測」(原語はprognostications;引用者注)とかを導くだけに甘んじているかということの説明になる。つまりそれは、もしいままで作用していたのと同じ力が将来も作用しつづけると仮定すれば起るであろうことを予測するだけであって、(もっと広い意味での)組織の新形態が導入されたとき、何が起るだろうかというようなことは告げることができない。したがって、ひとたび「政策」が変数として導入される場合は、われわれは計量経済学を超えて進まねばならないのである。
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