2009-01-01から1年間の記事一覧

マッカラム著「マネタリズムの経済学」

●Bennett T. McCallum, “Monetarism”(The Concise Encyclopedia of Economics, Library of Economics and Liberty) マネタリズムはマクロ経済学の一学派であり、以下の4点を強調する特徴がある。 (1)長期的な貨幣の中立性 (2)短期的な貨幣の非中立性…

スキデルスキー著「「規制」多き社会において「信用」は生き残りうるか?」

●Robert Skidelsky, “In Regulation We Trust?”(Project Syndicate, December 21, 2009) 来年度より、イギリス上院(House of Lords;貴族院)の全議員―私もその一員であるが―は、「女王に対する忠誠の宣誓」の場において、誠実性(honesty)と高潔性(int…

スキデルスキー「なぜ市場心理はあてにならないのか」

●Robert Skidelsky, “Why market sentiment has no credibility”(Financial Times, December 22, 2009)ここでは「market sentiment」を「市場心理」と訳したけれども、hongokuchoさんのご指摘によれば、業界的には「市場の地合い」と訳されるようである。 …

マンキュー=D. ローマー著「ニューケインジアンのマクロ経済学」

●N. Gregory Mankiw and David Romer(1991), “Introduction” (in N. Mankiw and David Romer (eds.) New Keynesian Economics Vol.1, MIT Press, pp.1〜3)出だしの所をちょっとばかり訳してみた。 ケインズ経済学の誕生は1930年代の経済危機に遡る。1930…

マンキュー著「ニューケインジアンのマクロ経済学をざっと一望してみる」

●N. Gregory Mankiw, “New Keynesian Economics”(The Concise Encyclopedia of Economics, Library of Economics and Liberty) ニューケインジアンのマクロ経済学(New Keynesian economics)は、ジョン・メイナード・ケインズの思想を引き継ぐ現代マクロ…

コーエン著「自己制御 vs 自己解放」(その5)

●Tyler Cowen(1991), “Self-Constraint Versus Self-Liberation(pdf)”(Ethics, Vol. 101, No. 2, pp. 360-373)第7節 「Constraint and Liberation as collective goods」/ 第8節 「Concluding remarks」の訳です。 (その1)〜(その5)を一つにまとめ…

コーエン著「自己制御 vs 自己解放」(その3)

●Tyler Cowen(1991), “Self-Constraint Versus Self-Liberation(pdf)”(Ethics, Vol. 101, No. 2, pp. 360-373)第4節 「Can the rule-oriented self be too strong ?」の訳です。この節は長めなので今回の訳はこの一節のみ。 Can the rule-oriented sel…

コーエン著「自己制御 vs 自己解放」(その4)

●Tyler Cowen(1991), “Self-Constraint Versus Self-Liberation(pdf)”(Ethics, Vol. 101, No. 2, pp. 360-373)第5節 「Is addiction always the result of weakness of will ?」/ 第6節 「Self-management and markets」の訳です。次回エントリーがラ…

コーエン著「自己制御 vs 自己解放」(その2)

●Tyler Cowen(1991), “Self-Constraint Versus Self-Liberation(pdf)”(Ethics, Vol. 101, No. 2, pp. 360-373)第2節 「How do the two selves differ ?」/ 第3節 「Can the impulsive self engage in strategic behavior ?」の訳です。 How do the two…

タロック教授の公共選択論入門

○Gordon Tullock, The Vote Motive (The Institute of Economic Affairs, December 2006)タイトルを直訳すると「投票の動機」となるかと思いますが、内容は一般向けに書かれた公共選択論入門です。pdfファイルで全文ダウンロードできます。本文自体は100ペ…

コーエン著「自己制御 vs 自己解放」(その1)

●Tyler Cowen(1991), “Self-Constraint Versus Self-Liberation(pdf)”(Ethics, Vol. 101, No. 2, pp. 360-373) 今回はイントロダクションだけしか訳していませんが、1エントリーごとに大体2節ずつ訳していって全部訳し終えたら何かしらの形で一つにま…

コーエン著「対立の可能性を秘めた世界秩序の経済効果」

●Tyler Cowen(1990), “Economic Effects of a Conflict-Prone World Order”(Public Choice, Vol. 64, No. 2, pp. 121-134) 1.Introduction(はじめに)国際紛争や戦争の経済効果を巡っては今日までに激しい議論がたたかわされてきた。軍国主義(militar…

タロック著「外部性と政府」

●Gordon Tullock(1998), “Externalities and Government”(Public Choice, Vol.96, No.3/4, pp. 411-415) スティグリッツはその著書である『Whither socialism』の中で不完全情報下あるいは不完備情報下での市場均衡は一般的にはパレート効率的ではないと…

タロック著「民間企業による公共財の供給」

●Gordon Tullock(1996), “Provision of public goods through privatization”(Kyklos, Vol.49(2), pp. 221-224)12月は英語力強化月間ということで(自分の中だけの話ですが)適当に英語の文章を訳していくことにしました。手始めはゴードン・タロックの…

白川総裁の揚げ足をとってみる 〜その2〜

レギュラー先生がまたまたつぶやかれていました。内容はタイトル通りでございます。揚げ足取りというよりも皮肉ってるといった感じですが。 ●「最近の金融経済情勢と金融政策運営」(名古屋での各界代表者との懇談における挨拶, 日本銀行総裁 白川方明, 2009…

手を縛られた日本銀行?

レギュラー先生のつぶやき第何弾かです。確か民主党が政権をとった際にも同じようなことをつぶやかれていたと記憶しています。この度の政府の「デフレ宣言」を受けてまたつぶやかれていました。以下は聞き取れた範囲でそのつぶやきをまとめたものです。 ここ…

デフレーションと日本銀行

●Adam S. Posen(2002), ”Deflation and the Bank of Japan”(Japan Times, September 23, 2002)最近本ブログでも度々言及しているポーゼンですが、ポーゼンの面白い論説を見つけたので訳してみました。2002年にジャパンタイムズに寄せられた論説です。200…

経済政策の反実仮想的な評価

昨日あたりからレギュラー先生がしきりに「ハンジツカソウ、ハンジツカソウ」と意味不明のことをつぶやいてらっしゃった。一体何をおっしゃっているんだろうと思ってつぶやきに耳を澄ましてみると「経済政策を反実仮想的に評価することの意味や問題」につい…

ポーゼン、インフレ目標の将来について語る

以前本ブログでも取り上げたポーゼンの議会証言のことをレギュラー先生に話したら、「そう言えば、ポーゼンがインフレ目標についてインタビューに答えているのを見かけたことがあるワンね。」とのお言葉。その後「かなり前に読んだので細部までは記憶してな…

岩田規久男著『日本銀行は信用できるか』を読んで

またまたレギュラー先生のつぶやきにのっかってエントリーを稼ぐ作戦です。以下はレギュラー先生が岩田規久男著『日本銀行は信用できるか』を読まれた後につぶやかれていたことの一部をまとめたものです。 岩田規久男著『日本銀行は信用できるか』をやっとこ…

Fedの金融危機対策〜「信用緩和」政策の中身〜

●Ben S. Bernanke, “The Crisis and the Policy Response”(At the Stamp Lecture, London School of Economics, London, England, January 13, 2009)バーナンキが今年の1月にLSEで行った講演を一部訳してみた。おそらく「信用緩和」(“credit easing”)と…

BOE インタゲパンフレット翻訳企画

●Bank of England, “Quantitative easing explained 〜Putting more money into our economy to boost spending〜(pdf)”連日の翻訳企画でございます。詳細はnight_in_tunisiさんのブログをご覧ください。以下は7枚目のページ(パンプレットのページ数ではp…

とりあえずメモ:「デフレ:問題の概観」(スウェーデン国立銀行)

●Sveriges Riksbank, “Deflation - an outline of the problems(pdf)”(Inflation Report, 2003/3)(追記)<暫定版>に対してブックマークをいただいた方々には大変申し訳ございませんが、スウェーデン国立銀行発行の“Deflation - an outline of the pro…

FOMC声明文の重箱の隅を突っついてみる

●WSJ Staff, “Fed Statement Following November Meeting”(Real Time Economics, November 4, 2009)「今回FOMCはFF金利の誘導目標を現状の0〜0.25%の水準に維持する(=つまりは現状維持)という結論に達した」ということで前回と変わらずということなん…

白川総裁の揚げ足をとってみる

●ロイター, “再送:白川日銀総裁会見の一問一答”(2009年10月30日)FOMC声明文の重箱の隅をつついたついでに今度は日銀総裁である白川総裁の発言の揚げ足をとってみようと思う。といっても揚げ足をとるのは私ではなくてレギュラー先生。以下は某所での先生の…

灰川総裁はかく語る

デフレ的政策は採用せず=田銀の灰川総裁 田銀の灰川総裁は3日通勤途中の電車内で講演し、「国債という借金の実質的な価値を目減りさせるためインフレ的な政策を採れば、さまざまな問題が起こる」と指摘。さらに「しかしながら、インフレ的な政策を採らなけ…

アダム・ポーゼンの翻意?

●金融市場異論百出, “デフレ対策は手ぬるいと日銀攻撃 かつての批判急先鋒の“懺悔””(ダイヤモンド・オンライン, 第91回, 2009年08月06日) 某氏のmixi日記経由で知る(本エントリーのタイトルも同氏から拝借)。 悲しいかな、私は会員登録してないので続き…

ハイエク、大不況について語る

●Steve Horwitz, “Hayek on Deflation and the Great Depression”(The Austrian Economists, October 20, 2009) “I agree with Milton Friedman that once the Crash had occurred, the Federal Reserve System pursued a silly deflationary policy. I am…

グローバルインバランスをいかにして是正するか?

●Ben S. Bernanke, “Asia and the Global Financial Crisis”(At the Federal Reserve Bank of San Francisco’s Conference on Asia and the Global Financial Crisis, Santa Barbara, California, October 19, 2009) As the global economy recovers and t…

『「ソフトな予算制約」症候群』と資本主義

●János Kornai(2009), “The soft budget constraint syndrome and the global financial crisis; Some warnings from an East European economist(pdf)” Softness of the budget constraint cannot yet be said to apply in a singular case where a fi…