コーエン著「中東和平に向けたロードマップ? 〜公共選択論の観点から〜」

●Tyler Cowen(2004), “A Road Map to Middle Eastern Peace? - A Public Choice Perspective”(Public Choice, Vol. 118, No. 1/2, pp. 1-10)/〔2022年6月23日〕訳を全面的に修正。 イスラエルとパレスチナの間で和平がなかなか達成されずにいるのは、な…

「自然と人為、ケインズと柴田」

久しぶりに某友人と会ってランチ。お得意のマシンガントークは衰えを知らず・・・というかむしろその勢いはさらに増しており、相槌を打つ暇さえありませんでした。某友人よ、そんなに急いでどこへ行く? デフレがどうして生じるか(デフレの原因)というとそ…

Marcus Nunes 「アベノミクスのこの1年の成果を振り返る」

●Marcus Nunes, “‘Abenomics’ one year on”(Historinhas, January 16, 2014) 一昨年(2012年)の9月のこと、経済を再び力強い成長軌道に乗せるとともにデフレからの脱却を目指すことを公約に掲げた安倍晋三氏が自民党の新たな総裁に選出された。そして、同…

「俗流ケインジアン」

●Paul Krugman, “Vulgar Keynesians”(Slate, February 7, 1997) *1 経済学の分野も、その他のあらゆる知的な営みと同様に、「学問版・収穫逓減の法則」の影響下にある。時折、偉大な革新者が颯爽と登場し、まるで詩人のような語り口で、自らのアイデアを披…

気になった論文や論説あれこれ

忘れないように書き留めておこう。 *日本経済関連●Simon Wren-Lewis, “Japan’s consumption tax: a test of modern macro?”(mainly macro, October 1, 2013)●Koichi Hamada, “Japan’s Tax-Hike Test”(Project Syndicate, October 24, 2013)●Barry Eiche…

David Henderson 「ロナルド・コース 〜「黒板経済学」に異を唱えた男〜」

●David R. Henderson, “The Man Who Resisted ‘Blackboard Economics'”(Wall Street Journal, September 4, 2013) つい先日のレイバーデー(Labor Day)に102歳でこの世を去ったロナルド・コース(Ronald Coase)は20世紀に活躍した経済学者の中でも最も稀…

ロナルド・コース逝去

「経済を支える制度的な構造と経済の機能に対して取引費用ならびに所有権が果たす役割の重要性を発見し、その明確化に努めた」業績を称えて1991年にノーベル経済学賞を授与されたロナルド・コース(Ronald H. Coase)が先日の9月2日に逝去されたとのこと。10…

『経済学101』

この度、以下のサイトの翻訳陣の一人に名を連ねさせていただくことになりました。●「経済学101−経済学的思考を一般に広めることを目的とした非営利団体です」 この「経済学101」(のうち翻訳部門)は、私自身もこれまで微力ながらも翻訳の協力をさせていただ…

Neil Irwin 「ケチャップ発言を巡るミステリー 〜あの発言の主は噂通りの人物? それとも・・・?〜」

●Neil Irwin, “The mystery of Ben Bernanke and the Japanese ketchup is solved!”(Wonkblog, May 12, 2013) つい先日私は中央銀行をテーマとした著書を上梓するに至ったが、その中でFRBの現議長とケチャップならびに日本銀行の三者を巡るちょっとしたミ…

コーエンの新訳が近々出版されるらしいよ

◎タイラー・コーエン著/石垣尚志*1訳 『アメリカはアートをどのように支援してきたか−芸術文化支援の創造的成功』(ミネルヴァ書房、2013年07月刊行予定)以下、出版元であるミネルヴァ書房のHPより引用。 芸術文化の振興に関して、対立するふたつの立場があ…

水準目標の利点とは?

以下、高橋洋一(監訳・解説)『リフレが正しい。FRB議長ベン・バーナンキの言葉』(「第7章 日本の金融政策、私はこう考える」)より引用。 「物価水準目標」の具体的な形態としてここで私が想定しているのは、「過去5年間を通じて、デフレではなく、たとえ…

assorted links;NGDP目標(その2)+α

*NGDP目標(NGDP目標リンク集(その1)はこちら)●Jeffrey Frankel, “Nominal GDP Targeting is Left, Right?”(Jeff Frankels Weblog, May 2, 2013)●Nick Rowe, “Raising expectations of inflation vs raising expectations of NGDP growth”(Worthwhile…

エガートソン 「アベノミクスとフランクリン・ルーズベルト」

●Gauti B. Eggertsson, “Abenomics and FDR”(Economic Notes, April 4, 2013) 過去数ヶ月のうちで経済政策の分野で起こった最も注目すべき出来事は、日本銀行と日本政府がデフレからの脱却に向けて金融政策と財政政策とをはっきりと(明示的に)「協調させ…

賃金にまつわるパラドックス

●Scott Sumner, “The wage paradox”(TheMoneyIllusion, March 15, 2013) 賃金の下落は労働市場が均衡から外れている(不均衡状態に置かれている)ことを示唆するサインであり、それゆえ問題が発生している証拠であると言える。一方で、賃金の下落は労働市…

Marcus Nunes 「日本で今何が起こっているのか? 〜予想インフレ率の気になる急落〜」

●Marcus Nunes, “A visual take on Japan”(Historinhas, June 4, 2013) 直近のエントリー(訳注;sowerberryさんによる邦訳はこちら)でラルス・クリステンセンが次のように語っている。 ここのところ日本では予想インフレ率が低下しているわけだが、その…

「ありがとう、レギュラー先生。さようなら、レギュラー先生」

イングランド銀行の新総裁に就任予定のマーク・カーニー(Mark Carney)に金融政策のノウハウを学ぼうとイギリスに向かわれたレギュラー先生。岩田規久男氏*1が日銀副総裁に就任したとのニュースを今更ながら知って、ひとまず村はずれの庵に戻る決心をなされ…

『リフレが正しい。FRB議長ベン・バーナンキの言葉』

本日(5月24日)、中経出版より高橋洋一氏の監訳・解説で『リフレが正しい。FRB議長ベン・バーナンキの言葉』が出版されました。本書は、現FRB議長であるベン・バーナンキによる講演(理事時代の講演も含む)と議会証言、そしてFOMCによるプレスリリース(記…

「景気循環は椅子取りゲームみたいなもの」

●Scott Sumner, “The game of musical chairs, continued.”(TheMoneyIllusion, January 28, 2013) 景気循環を理解するのにDSGE(動学的確率的一般均衡)モデルなぞ必要ない。景気循環というのは基本的に椅子取りゲームみたいなものなのだ。名目賃金は極め…

「貨幣と生産 〜椅子取りゲームモデル〜」

●Scott Sumner, “Money and output (The musical chairs model)”(TheMoneyIllusion, April 6, 2013) ここ最近の一連のエントリーでは、金融政策が長期的に物価にどのようなインパクトを及ぼすのかについて説明を行ってきた。その際に依拠した基本的なアプ…

「ケインズ経済学をめぐる『7つの神話』」

●Mark Thoma, “Seven Myths about Keynesian Economics”(The Fiscal Times, May 7, 2013) 「ケインズは独特な性的嗜好の持ち主であり、さらに子供がいなかった。ケインズが長期的な経済問題に無関心であったのはそのためだ」。つい先日、ハーバード大学の…

ブランシャール 「複数均衡におけるアナウンスメントの役割 〜「悪い」均衡から「良い」均衡へ〜」

●Olivier Blanchard, “Rethinking Macroeconomic Policy”(iMFdirect, April 29, 2013)より一部抜粋訳。 <その6>目視での航海(Navigating by sight) 複数均衡とコミュニケーション(Multiple equilibria and communication)複数均衡が成り立つ世界では…

「ウッドフォード・ピリオド 〜迎え酒にバーボンを〜」

●Bill C, “The 'Woodford Period': A Bourbon for Bernanke?”(Twenty-Cent Paradigms, February 21, 2013) つい先日、セントルイス連銀総裁であるジェームス・ブラード(James Bullard)が「現状の金融政策のスタンス」をテーマに講演を行ったが、その内容…

Menzie Chinn 「近隣富裕化政策としての世界同時リフレ 〜回復スピードが二極化する世界におけるリフレーションと支出転換〜」

●Menzie Chinn, “Reflation and Expenditure Switching in a Two Speed World”(Econbrowser, March 25, 2013) バーナンキがすべてを語ってくれている。FRB議長であるベン・バーナンキ(Ben Bernanke)が本日(3月25日)LSEで講演を行い、そこで次のように…

サムナー 「臆病さという名の罠」

●Scott Sumner, “Nothing to see here folks, move right along”(TheMoneyIllusion, April 4, 2013) 多くの著名なマクロ経済学者や経済専門家、ブロガーの口々から「FedやBOE、ECBにはもはや打つ手がない。だからこそ財政刺激策が必要なのだ」との主張が発…

「15年ものタイムロス−ついに聞き入れられたフリードマンのアドバイス」

●Lars Christensen, “15 years too late: Reviving Japan (the ECB should watch and learn)”(The Market Monetarist, April 4, 2013) これまで過去15年にわたって日本銀行はデフレ的な政策(deflationary policies)を推し進めてきたが、その日本銀行が今…

「デフレ克服に向けて―黒田日銀新体制最初の一歩」

●Matthew Yglesias, “BOJ's Kuroda Vows To Use "Every Means Available" To Fight Deflation”(Moneybox, April 4, 2013) 本日、黒田東彦総裁率いる日本銀行新体制下で初めての金融政策決定会合が開催され、安倍晋三首相が掲げる2%のインフレ目標(消費者…

グローバリゼーション反対の理由 〜自己利益と・・・〜

●Tyler Cowen, “Culture in the Global Economy(pdf)”(The 2000 Hans L Zetterberg Lecture, City University Press)以下、pp.48〜49より抜粋訳。 質問:多くの人々がグローバリゼーションに反対する理由はグローバリゼーション(≒貿易の自由化)の進展…

「尾の振り方」を学ぶためイギリスへ向かう+クルーグマンインタビュー

ハワイで長いバカンスを満喫されていたご様子のレギュラー先生が「リフレ摘発」のニュースに驚いて一時帰国。勘違いだったとわかるや、すぐさまイギリスに旅立たれました。イングランド銀行の新総裁に就任予定のカーニーに「尾の振り方」を学ぶためだそうで…

「通貨戦争をめぐる混乱」+α

●Paul Krugman, “Currency War Confusions”(The Conscience of Liberal, February 15, 2013)所々こちらで勝手に言い回しを変えているところがあるのでご注意を。 最近話題になっている「通貨戦争」(“currency war”)についてどう思うかと尋ねられることが…

「Q. 仮に日本銀行が実際とは異なる金融政策を採っていたとしたらデフレは避け得ただろうか?」

●Japan's Deflation(IGM Economic Experts Panel, January 29, 2013) 「1997年以降日本ではデフレーションがしぶとく続いているが、仮に日本銀行が実際とは異なる金融政策を採っていたとしたらデフレは避け得ただろう」。この主張に同意しますか? *「強…