わが孫たちの経済的可能性(途中報告)


●Fabrizio Zilibotti(2007),“ "Economic Possibilities for Our Grandchildren" 75 Years after: A Global Perspective(pdf)”(IEW - Working Papers,Working Paper No. 344)

1930年に「重大な戦争と顕著な人口の増加がないものと仮定すれば、経済問題は100年以内に解決されるか、あるいは少なくとも解決のメドがつくであろう」と予言した有名な経済学者がおりました。その名をケインズ(J. M. Keynes)といいます。100年後には「先進国の生活水準は今よりも4〜8倍は向上しているだろう」し、「週15時間程度の労働ですむ社会になっているだろう」とも述べております(「わが孫たちの経済的可能性」in 『説得評論集』)。
果たしてケインズ氏の予言(楽観的な、あまりに楽観的な)はどこまで的中しているのでしょうか(ケインズが言う「100年後」まであと20年ちょい残ってますんで、正確には的中する見込みはありやなしや、とすべきでしょう)?*1 ケインズ氏の予言の可否がどうしても気になるという人は、・・・・Zilibotti氏の論文に目を通してみたらいいと思うんだ(一言でZilibotti氏の結論をまとめておきますと、「全くの的外れとはいえないけれど・・・」ということです*2)。


「わが孫たちの経済的可能性」(英語ver.)はこちらで読むことができます。

*1:よくよく考えてみれば、1930年以降に重大な戦争(=WWⅡ)が発生しているので仮定が満たされていない=前件が偽である条件命題は真ということになって、「ケインズの予言は真なり」ということになりますが、この際細かいことは置いときましょう。

*2:あまりにも適当過ぎるんで、もうちょいちゃんとまとめておこう。

●「生活水準は今よりも4〜8倍は向上しているだろう」→○
(一人当たりGDPで考えれば、このままうまくいけば(=これまでの約50年間の実績である人口比で加重平均した一人当たりGDP成長率2.9%が今後も維持されれば)100年で世界経済全体の生活水準は17倍向上することになる。ただし、あくまでも世界全体の平均でみればの話であって、アフリカのサブ-サハラとかラテンアメリカとか中東とか地域別にみると生活水準が目を見張るほど改善した、とは必ずしもいえない=「4〜8倍向上」を満たさない(or 満たしそうにない)地域もある)。

●「週15時間程度の労働ですむ社会になっているだろう」→×
(確かに週労働時間は減ってきているけれど、週15時間労働が実現している地域はまだどこにもない。平均寿命が伸び、退職年齢が下がったことによって人生全体で仕事に費やされる時間の割合が減少してきている、という点とか他にもケインズの予測(週労働時間という点にこだわらないのであれば)にマッチするような要因は色々あるけれども、とにかく週15時間労働という予測は楽観的過ぎた=週15時間労働が実現していた場合よりもヨリ多くの割合(=人生全体で仕事に費やされる時間の割合)を今現在の我々は労働に費やしている)。

その他にも色々論じられていますが、詳しくは直接Zilibotti論文にあたってちょ。