手を縛られた日本銀行?


レギュラー先生のつぶやき第何弾かです。確か民主党が政権をとった際にも同じようなことをつぶやかれていたと記憶しています。この度の政府の「デフレ宣言」を受けてまたつぶやかれていました。以下は聞き取れた範囲でそのつぶやきをまとめたものです。

ここで一つ思考実験をしてみるワン。
中央銀行の独立性という問題はひとまず脇に置いておいて、日銀が政府の言いなりだと仮定するワン。
現政権は民主党ワンが、民主党と言えば昨年の日銀総裁・副総裁人事のゴタゴタの原因の一端を担っているワンが、ゴタゴタした理由は財金分離というよくわからない原理を振り回して元財務事務次官の武藤氏の日銀総裁就任を頑なに認めなかったからワン。加えて民主党伊藤隆敏教授の副総裁就任に関しても「インフレ目標を提唱している」「構造改革路線を支持していた」等の理由を挙げて反対にまわったワン。
この事実をもって民主党は財金分離主義であり反インタゲであるという特徴付けができるかもしれないワン。現在もそうなのかはわからないワンが。
こういう特徴を持つ民主党が政権与党であるということが日銀の金融政策運営に対してどういう意味を持つワンだろうか?
まず財金分離主義ワン。財金分離の内実がよくわからないワンが、例えば財金分離主義の具体的な中身として日銀による国債買い入れの禁止ということがあるかもしれないワンね。財金分離主義が何だかわからないので、これはかなり無理やりな話かもしれないワンが。
そして反インタゲというのは明瞭ワンね。日銀はインタゲを宣言できないということワン。
以上の話はあくまで中央銀行の独立性という問題は脇において日銀が政府の言いなりだと仮定した場合の話ワン。
さて今回民主党政府は「デフレ宣言」をしたワン。
これといった対策もなしに「デフレ宣言」するのは無責任だという声もあるかもしれないワン。
確かにそうワンね。無責任ワン。でも無責任というのは別の理由ワン。
「デフレ宣言」も大事ワンけど、民主党は宣言するべきことが別にあるワン。
日銀総裁・副総裁人事のゴタゴタの原因を作ったことに対して公に謝罪すべきワン。
日銀総裁・副総裁人事のゴタゴタの原因の背後に民主党が財金分離主義であり反インタゲであるということがあり、そしてあくまで中央銀行の独立性という問題は脇において日銀が政府の言いなりだと仮定すれば、日銀は政府の方針に従って国債買い入れもできず、インタゲも宣言できないということになるワン。こんな状態で機動的な金融政策運営ができるはずがないワン。日銀がデフレ克服に取り組む際に邪魔になるワン。
日銀は今回の「デフレ宣言」以前からずっと、民主党が政権をとって以降ずっと、国債買い入れもできずインタゲもできずという意味で手を縛られた状態で金融政策を運営しなければいけなかったんだワン。こんな無責任なことはないワン。
民主党は一刻も早く日銀総裁・副総裁人事のゴタゴタの原因を作ったことに対して公に謝罪すべきワン。日銀がデフレ克服に専念できるためにも。
今回の「デフレ宣言」と民主党が財金分離主義かつ反インタゲということとは全く関係がないワン。
日銀総裁・副総裁人事のゴタゴタの原因を作ったことに対して公に謝罪しない限りは、「デフレ宣言」をしようがしまいが、民主党は財金分離主義かつ反インタゲであり、そしてあくまで中央銀行の独立性という問題は脇において日銀が政府の言いなりだと仮定すれば、日銀が国債買い入れもできずインタゲも宣言できないという状態はこれまでも続いてきたし、またこれからもいつまでも続くことになるワン。
民主党は一刻も早く日銀総裁・副総裁人事のゴタゴタの原因を作ったことに対して公に謝罪すべきワン。
ただ日銀は完全に手を縛られているというわけではないワン。
インタゲがダメでも物価水準ターゲットがあるワン。
国債買い入れがダメでも買い入れ対象の候補になる資産はいくらでもあるワン。
そして何よりこの思考実験が馬鹿らしいのは、「あくまで中央銀行の独立性という問題は脇において日銀が政府の言いなり」という仮定だワン。
頑なに目標の独立性に固執する(=政府との間で政策目標を共有することに抵抗する)日銀がそう易々と手段の独立性を手放すはずはないワン。
それに民主党日銀総裁・副総裁人事に反対した理由が財金分離主義と反インタゲとに基づいていたとしても、それが今も民主党の方針であるかのように扱うのも無理があるワン。あり得ないことワンけど、もし政府与党の方針が金融政策の手段を縛るほどの影響力があるならば、過去の人事でのゴタゴタの事実から民主党は財金分離主義で反インタゲであるのではないかというかたちで推測するに任せるのではなくて、党のトップが「民主党は財金分離主義で反インタゲだ」と明示的に語るべきワン。
もし民主党が「我々は財金分離主義で反インタゲだ」と明示的なかたちで主張し、さらには金融政策の手段を縛ろうとしてきたら、日銀は「日本銀行は国民に対して「物価安定」と「金融システムの安定化」とを実現するという法的責務を負っている。国民に対するこれら法的責務を履行するあたって障害となるような無理な注文は受け入れることはできない」と突っぱねればいいだけワン。

長々と無駄な思考実験をしてきたワンけど、ただ日銀総裁・副総裁人事のゴタゴタの原因を作ったことに対してはできれば謝罪してもらいたいワンね。


(追記)どうもhicksianです。レギュラー先生のつぶやきの真意は本石町方面を探索してみるとよくわかるかもしれません。本石町方面をやんわりと批判なさっているみたいです。


(追々記)レギュラー先生、まだまだつぶやき足りないご様子です。

民主党が党是として財金分離主義と反インタゲとを採用していると仮定して、「財金分離かつ反インタゲの民主党政府はデフレ対策として日銀に対して国債買い入れの増額とインタゲとを要求することはできない」と主張することの意味を考えてみるワン。財金分離主義だと日銀に対して国債買い入れ増額の要求ができないという点は無理やりな話だワンけど、一応そういうものだと考えておくワン。
ただ変な誤解を招かないために最初に指摘しておくワンが、「財金分離かつ反インタゲの民主党政府はデフレ対策として日銀に対して国債買い入れの増額とインタゲとを要求することはできない」という主張は、「財金分離かつ反インタゲの民主党政府はデフレ対策として日銀に対してさらなる金融緩和策を要求することはできない」という主張と同じではないということワン。財金分離かつ反インフレを党是としていることによって民主党が日銀に対して国債買い入れの増額とインタゲとを要求できないとしても、日銀に要求する政策オプションとして例えば物価水準ターゲットの導入や民間資産の購入とを求めることは可能ワン。物価水準ターゲットと民間資産の購入とは反インタゲと財金分離とは抵触しないワンから。
さて「財金分離かつ反インタゲの民主党政府はデフレ対策として日銀に対して国債買い入れの増額とインタゲとを要求することはできない」と主張することの意味ワン。
もしこう主張することに何らかの意味があるとすれば、前提として国債買い入れの増額とインタゲとはデフレ対策として効果があると認識していることになるワン。というのも、国債買い入れの増額とインタゲとはデフレ対策として効果がないと判断しているとすれば、民主党はデフレ対策として日銀に対してデフレ対策として効果がない国債買い入れの増額とインタゲとを要求できない、ということになるワン。デフレ対策として効果がある政策を要求できないと指摘することには意味があるワンけど、デフレ対策として効果がない政策を要求できないと指摘することにどんな意味があるのかわからないワン。
国債買い入れとインタゲとがデフレ対策として有効であると受け入れた上で、「財金分離かつ反インタゲの民主党政府はデフレ対策として日銀に対して国債買い入れの増額とインタゲとを要求することはできない」という主張からどういった含意が引き出せるだろうかワン。
わかりやすいのは民主党は財金分離かつ反インタゲという党是をさっさと引っ込めろということワンね。そうすれば民主党は何の咎めもなしに、デフレ対策として有効な国債買い入れとインタゲとを日銀に対して要求することができるようになるワン。ただ民主党が党是として財金分離かつ反インタゲを採用しているとすればの話だワンけど。
もう一つ捻くれた含意としては、財金分離かつ反インタゲの民主党政府が要求しないのであれば、つまりは日銀が自らの意志だけに則って政策運営するのであれば、国債買い入れの増額とインタゲとは政策オプションとして利用可能である、ということがあるかもしれないワン。日銀が自発的に国債買い入れの増額とインタゲとに踏み切ることはできるワンが、政府が日銀に対して国債買い入れの増額とインタゲと要求することはできないということワン。
ただこの話はさらなる疑問を生むことになるワン。なぜ日銀は自らの意思で国債買い入れとインタゲとに踏み切らないのか、ということワン。おそらく日銀は国債買い入れとインタゲとはデフレ対策として効果はないと考えているから、というのが率直な回答だろうワンけど、「財金分離かつ反インタゲの民主党政府はデフレ対策として日銀に対して国債買い入れの増額とインタゲとを要求することはできない」と主張する人は国債買い入れの増額とインタゲとはデフレ対策として有効と判断しているはずだろうワンから(そうじゃないと上で述べたように民主党=財金分離かつ反インタゲと指摘することの意味がわからないワン)、なぜ日銀は国債買い入れの増額とインタゲに踏み切らないのか、なぜ日銀は国債買い入れの増額とインタゲとはデフレ対策として有効でないと考えているのか、その点徹底的に問い質すべきワンね。
つまりは、「財金分離かつ反インタゲの民主党政府はデフレ対策として日銀に対して国債買い入れの増額とインタゲとを要求することはできない」との主張には、日銀に対する批判的な見解が込められているということワン。
日銀の自由に任せておいてはデフレ対策に効果のある国債買い入れの増額とインタゲとが採用されることはない。そのため日銀が国債買い入れの増額とインタゲの採用とに踏み切るよう政府が圧力をかける必要があるが、政府が財金分離主義と反インタゲとを党是としている限りはそのような要求をすることはできない。政府は一刻も早く財金分離主義と反インタゲとを党是から引っ込めるべきだ。
ということワン。ただ最初に指摘したように財金分離主義と反インタゲを党是としたままでも日銀に対して更なる金融緩和策(例. 物価水準ターゲット、民間資産の購入)を要求することはできるワンけど。
以上は民主党が財金分離と反インタゲとを党是としていると仮定しての話だワン。