「ポーゼン、日本経済の行方について語る」を語る


恒例の(?)あの友人とランチ。今年も相変わらず元気な様子で・・・今年も色んな意味で長い一年になりそうだ。

中央銀行の独立性」については去年一緒にランチした際に話したけれど、直近のhimaginaryさんのブログでも独立性の話題が取り上げられているよね。

●「中央銀行の独立性は政府支出を増加させる」(himaginaryの日記, 2013年1月9日)
●「スティグリッツ「中央銀行の独立なんかいらない」」(himaginaryの日記, 2013年1月10日)


そういえばアダム・ポーゼン(Adam Posen)の年末のインタビューでも中銀の独立性について触れられていたよね。「目標の独立性」と「手段の独立性」とをちゃっかりと区別した上で、政府が中央銀行に対して特定の手段の行使を強制するのは「手段の独立性」の侵害だけれど、政府が中央銀行の政策に文句を述べたり注文をつけるのは独立性(「手段の独立性」)の侵害でも何でもないって語ってたよね。政府が中銀のパフォーマンスを評価して何が悪いの? アメリカ政府がFBIとかその他の「独立した」政府機関のパフォーマンスに口を出すのと同じでしょ?ってね。そして、国民の代表たる政府のトップが中央銀行の目標を定める(このことをポーゼンは「目標の依存性」(goal dependence)と表現しているけれど)のは「中央銀行の独立性」に何ら反するものではない、と語っているよね。

ちょっと待ってだよね。そのスピーチ探すからね。・・・あら、トランスクリプト(インタビューの文字起こし)もきてるよね。

●“A New Direction for Japan? Part I: Interview with Adam Posen”(Peterson Perspectives Interviews on Current Topics, December 31, 2012)

このインタビューは面白いよね。かつて君がブログで取り上げていたスピーチでも語っていたけれど、過去の日本で量的緩和がそれほど効果を持たなかったのは、日銀が自ら効果を持たないような方向にもっていってたんだから別に驚くことでもないよ。満期が短い国債を買ったり、中銀当局自ら「おそらくデフレは避けることのできない現象で・・・」とか政策効果を否定するような発言を繰り返してたらそりゃ効かないよ、と日銀に対して実に手厳しいよね。

その代わりに、インフレ目標の引き上げ+「おそらくデフレは避けることのできない現象で・・・」とか政策効果を否定するような発言をしない+購入対象資産の範囲を(長期国債社債、外国の(アメリカとかヨーロッパの国々の)国債などにまで)広げる、といった一連の政策の組み合わせに乗り出すべきだ、と語っているよね。

以上の政策は、どうやら安倍政権が推進するつもりらしいし、伊藤隆敏・岩田一政・浜田宏一といった日本の経済学者が提唱している政策でもあり、私(ポーゼン)も支持する政策だ、と語っているよね。

日本ではリーダーシップの変更に伴って時にラディカルな政策転換が行われることがある。日銀総裁の交代が間近に迫っているけれど、日銀総裁の交代に伴って金融政策の面でもラディカルな変更があるかもしれないよ、とも指摘しているよね。

インタビューのパートⅡでは現在の日本において財政政策を使うことに対して懐疑的な見解を表明しているよね。

●“A New Direction for Japan? Part II: Interview with Adam Posen”(Peterson Perspectives Interviews on Current Topics, December 31, 2012) 

“I strongly disagree on fiscal policy”って語っているよね。15年前であれば財政政策を使うのもグッドアイデアだったろうけど、現在の状況で(津波で被害を受けた設備等を補修する目的を超えて)財政政策を発動することに関しては疑問だよ、とね。

というのも、現在日本が抱える問題は総需要不足一般というよりはデフレと行き過ぎた円高にあり−そのため大規模な金融緩和は理にかなっている−、この15年の間にかなり政府債務も積み上がってきてるから、という理屈みたいだね。

“So, I think the monetary impetus is right, but I think that a fiscal stimulus right now for Japan―it’s always context specific when it works and when it doesn’t― I don’t think it’s productive.”

「そういうわけで、一層の金融緩和の発動は正しいけれど、今現在日本が置かれている文脈においては財政政策の発動は生産的ではないと思う−財政政策が効くかどうかは常に文脈に依存するものなのだ−。」

もう時間がなくて行かなきゃいけないけれど、トランスクリプトも準備してくれてることだし、時間に余裕があればインタビュー全部に目を通すことをお勧めするよね(今日は一切触れることができなかったけれど、インタビューでは日本と中国との緊張関係とそれが持つ意味についても触れられているよね)。それじゃまた、だよね。

・・・そうそうだよね。昨年のジャクソンホールシンポジウムで発表されたウッドフォードの論文は各地で評判になったけれど、ウッドフォードの討論相手を務めたのが誰であろう・・・そう、ポーゼンだよね。どうせ今日のこの会話もブログにまとめるんだろうから、ポーゼンのコメントのリンクもついでに貼っておいてだよね。

●Adam Posen, “Comments on “Methods of Policy Accommodation at the Interest-Rate Lower Bound” by Michael Woodford(pdf)”