Foolproof Way


●Lars E.O. Svensson,“Monetary Policy and Japan’s Liquidity Trap(pdf)”(September 2005;スヴェンソンHPより)。


日銀によるゼロ金利政策/量的緩和政策は将来の短期金利の低下予想ないしは長期金利の低下には寄与しているかもしれないが、将来の期待物価水準を十分に高めることには失敗している(=量的緩和政策が長期間にわたって持続する(permanentである)と捉えられていない;将来の期待物価水準が上昇しているならばそれと同程度の(現時点での)円安(減価)が起こるはずなのにその兆候が見られない)。金融政策が名目金利の非負制約に直面している状況(=実質ゼロのオーバーナイト金利)では、既に低い水準にある将来の名目金利予想をさらに低下させるよりも将来の期待物価水準を高めることのほうが実質金利の低下、ひいてはデフレギャップの縮小に大きなインパクトを持つ。日本経済が流動性の罠から脱するためには、日銀と財務省が協調し(将来の期待物価水準を高めることに資する)Foolproof Way*1を採用すべきである。


詳しい内容は後ほど追記するかもしれないけれども、同教授の“開放経済下における名目金利の非負制約:流動性の罠を脱出する確実な方法(pdf)”(IMES Discussion Paper J-Series,2001-J-6;『ポスト・バブルの金融政策』にも所収)と内容的にはそれほど変わらないので(簡略版といったところか)、そちらをお読みください。ってとっくの昔に読んでますかそうですか。ポール・クルーグマン著/山形浩生訳『クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門』にも(一部)訳出されて・・・って知ってますかそうですか。


ポスト・バブルの金融政策―1990年代調整期の政策対応とその検証

ポスト・バブルの金融政策―1990年代調整期の政策対応とその検証


クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門

クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門

*1:物価水準ターゲティング(スヴェンソンによれば、95年以降(実際のデフレではなくて)CPI(生鮮食品を除く)が1〜2%のインフレ率で上昇していたならば到達しているだろう物価水準経路を目標に現実の物価水準経路とのギャップを埋めてゆく。この想定のもとでは2000年時点での両者のギャップは3〜8%になっている。2005年現在では11〜23%。一年ですべて埋める必要はないけど)を設定し、その目標とする物価水準と整合的なレベルに(減価させたうえで)為替レートを一時的にペッグする。現実の物価が目標とする物価水準のパスに到達した後は為替レートペッグを放棄し、(景気過熱リスクやインフレ率の乱高下を回避するために)物価水準ターゲティングないしはインタゲに移行する(=(本来の?)出口戦略)。為替レートペッグの放棄前後では目標とするインフレ率は違ってきますね。