14歳の妹に金融危機発生のメカニズムを説明してみる


●Kevin Nguyen, “The Financial Crisis, as Explained to My Fourteen-Year-Old Sister”(The Bygone Bureau, October 1, 2008)

Kevin: Have you been following the news?(ニュースとか見てる? 金融危機だなんだって。)

Olivia: Yeah, I don’t really get it.(うん。何がどうなってんだかさっぱりだわ。)

Kevin: Imagine that I let you borrow $50, but in exchange for my generosity, you promise to pay me back the $50 with an extra $10 in interest. To make sure you pay me back, I take your Charizard Pokémon card as collateral.
(ちょっと想像してみてごらん。兄ちゃんがお前に50ドル貸してやったとしよう。兄ちゃんの優しさに免じて、そうだな、貸してやった50ドルに10ドルの利子をつけて返済するっていう契約にしよう。お前がちゃんと50ドル(+利子10ドル)を返済する気になるようにお前のリザードン(キャラクターの名前)のポケモンカードを担保として兄ちゃんが預かることにしよう。)

Olivia: Kevin, I don’t play Pokémon anymore.(お兄ちゃん、私もうポケモンカードなんかで遊んでないわよ。)

Kevin: I’m getting to that. Let’s say that the Charizard is worth $50, so in case you decide to not return my money, at least I’ll have something that’s worth what I loaned out.
まあまあ、細かいことは置いといて先を続けよう(訳者;ここ微妙)そのことにも触れようと思ってるんだけどちょっと待ってて(←ブックマークでのkudzu_naokiさんならびにコメント欄でのluke_randomwalkerさんのご指摘による。ありがとうございます)。そのリザードンは今50ドルのプレミアが付いてる。だからお前が借りたお金を返さないとしてもお兄ちゃんはどうってことない。お前がお金を返さない場合、貸したお金と同じ価値のリザードンがお兄ちゃんのものになるから(何となればカードを売って50ドルを手にすることができる)。)

Olivia: Okay.(そうね。)

Kevin: But one day, people realize that Pokémon is stupid and everyone decides that the cards are overvalued. That’s right—everybody turned twelve on the same day! Now your Charizard is only worth, say, $25.
(でもある日、みんながポケモンがつまらなくなってカードの価値に疑問を持ち始めたとする。ただのカードなのになんでこんなに高いんだと。みんな1日でカードを12回も交換するって話だ12歳になって小学校(初等教育)を卒業すると同時にみんなポケモンからも卒業するからそういうことになる(=50ドルというリザードンの価値に疑いがもたれることになる)んだろう(←コメント欄でのzajujiさんのご指摘による。ありがとうございます)。それで今やリザードンは25ドルの価値しかなくなったとする。)

Olivia: Uh-huh.(うん。)

Kevin: At the same time, you’re having trouble paying back the $60 you owe me. So what would you rather do: try and pay me back the $60 or just default and give me your $25 Charizard?
リザードンの価値が25ドルに下がったちょうどそのタイミングで兄ちゃんから借りたお金の返済期日がやってきた。でもお前は60ドル(利子含む)返せそうにない。そんな時どうする? どうにかして必死になって60ドル返そうとする? それともお金返そうなんて考えずに今や25ドルの価値しかないリザードンをお兄ちゃんにくれてやる?)

Olivia: I’d give you the Charizard.(私なら必死こいて60ドル返そうなんてしないでリザードンをお兄ちゃんにあげちゃうでしょうね。)

Kevin: Exactly. Who wouldn’t? Now, the bank—I mean me—has lost $25 when I expected to make $10. What’s the lesson here?
(やっぱりね。カード渡してめでたしめでたし、って考えない奴なんていると思うかい? 今や銀行―兄ちゃんのことだけど―は10ドルの儲け(利子)を期待してお金を貸したのに25ドルの損を抱えることになった(貸した50ドルが25ドルのリザードンとして手元に戻ってきたので、25ドル(=25−50)を失った)。この話からわかる教訓ってなんだろう?)

Olivia: Pokémon is dumb.(ポケモンはダメダメだ。)

Kevin: True, but keep going.(そうなんだろうけど、もうちょっと頑張って考えてみようか。)

Olivia: That Pokémon cards might be worth less later than they are now?(ポケモンカードはそのうち価値が下がることがあるかもしれないってこと?)

Kevin: Close. You just can’t rely on them appreciating in value forever. There’s one other good lesson in this analogy.
(おお、いい感じになってきた。ポケモンカードにいつまでも高いプレミアムがつき続ける保証はないってことだね。それもこの話の重要な教訓の一つだ。)

Olivia: That you shouldn’t lend me money?(私にお金を貸すべきじゃないってこと?)

Kevin: A-ha, exactly right! You’re fourteen and have no source of income. What would convince me to lend you money if I’m not sure you can pay it back?
(キタ! そのとお〜り。お前は14歳でまだお金を稼ぐことができるような状況にない。お前が給料(そもそも給料なんて稼いでいない)から借りたお金を返すことができないとわかってるのに*1何で兄ちゃんはお前にお金を貸そうなんて考えたんだろうね?)

Olivia: Because you could’ve taken my $50 Charizard. So you could have either made $10 or gotten something worth what you gave me. If people didn’t realize Pokémon was dumb, then there was no way for you to lose anything.
(私がお金を返せなくてもその時は50ドルのリザードンがお兄ちゃんのものになるからでしょ。だから私にお金貸したら10ドルの儲けを得るか(=妹がちゃんと返済の約束を守って利子を10ドルつけて借りたお金を返した場合)、最悪でもお兄ちゃんが私に貸した50ドル分は担保のリザードンがあるから保証されることになる。みんながポケモンはダメダメだと考えるようなことがなければ(=リザードンの価値が25ドルに下がらずに50ドルのままであれば)、お兄ちゃんが損をすることはない。)

Kevin: Now, instead of a loan of $50, imagine that it’s hundreds of thousands of dollars; then instead of a Pokémon card, it’s your house. The U.S.’s prosperity was built on the idea that real estate/Pokémon would never go down. Multiply this wishful thinking by thousands of people in America and you can see the scale of our problem.
(ここでもう一つ想像を働かせてみよう。これまでのように50ドルなんてしみったれた金額じゃなくて何億ドルものお金の貸し借りを考えてみよう。担保はポケモンカードじゃなくて家だ。アメリカ経済の繁栄は不動産(これまでの話だとポケモンに相当するもの)の価値が決して下がることはないだろうという思惑の上に成り立っていた。この希望的観測(=不動産の価値は下がらない)がアメリカに住む何千という人々に共有されているとすると、これまでの兄ちゃんとお前とのお金の貸し借りの話のスケールをでっかくすることができる。)

Since you couldn’t pay me back, I can’t pay my bills and I can’t loan out any more money. Our country is dependent on the ability to borrow money.
(お前がお金を返すことができなかったんで兄ちゃんも借りてたお金を返せなくなるかもしれない。さらには兄ちゃんが他の人にお金を貸すこともできなくなるかもしれない。兄ちゃんたちが住んでるこの国が繁栄するかどうかはお金の貸し借りがどれだけスムーズにまわっていくかにかかってるんだ。)

Mikeroeconomics経由。
金融危機発生のメカニズム」というよりはサブプライムローンの問題だね。金融危機の発生源がサブプライムローンにあるとするならば、「金融危機発生のメカニズム」というのも間違いではないだろうけど。
日本の少女向けに同じ話をするんならポケモンカードだけじゃなくて遊戯王カードとかムシキングカードとかも担保の候補になりそうだね。

*1:正確には「妹が借りたお金を返せるかどうか確信が持てないならばうんぬん」となるんだけれども、所得の範囲内からローンを返済できそうにないという点を強調するために(サブプライムローンの問題点でもあるということで)文中にあるようにちょっと味付けして訳してみました。