バーナンキ! バーナンキ!
Brad DeLong’s Semi-Daily Journal;
Bernanke as Inflation Fighter
http://delong.typepad.com/sdj/2005/10/bernanke_as_inf.html
バーナンキがインフレ許容的であるというのは全くの誤解である。バーナンキは政権の言いなりであり、財政赤字の拡張を原因とするインフレギャップの拡大を放置するだろうという観測は間違っている。彼はグリーンスパン同様に物価安定を目指して粛々と政策運営に従事するはずである。
The Economist on Ben Bernanke
http://delong.typepad.com/sdj/2005/10/economistcom.html
バーナンキは金融緩和へと偏しすぎている(erring on the expansionist side of monetary policy)=インフレ許容的である、とのThe Economisit誌のバーナンキ評に反論。The Economisit誌の記者は、バーナンキのスピーチ―FRBはアメリカ経済がデフレに陥る前にデフレを食いとどめる力を有している(デフレは金融緩和によって事前に回避可能である)―の意図を誤解(デフレ回避のための金融緩和以上のことを意味していると理解=足元の経済状況いかんにかかわらず金融政策を緩和ぎみに運営するのではないか)しており、バーナンキはインフレ愛好的であるために(=財政赤字の拡大を許容)ブッシュからの指名を勝ち得たのである、との胡散臭い噂に振り回されているだけである。
The Press's Definitive Word on Ben Bernanke
http://delong.typepad.com/sdj/2005/10/the_presss_defi.html
Ben BernankeのFRB議長指名はHarriet Miersの連邦最高裁判所判事の候補者指名とは正反対の、驚くべきほどまっとうな選択である。
Marginal Revolution;
Ben Bernanke
http://www.marginalrevolution.com/marginalrevolution/2005/10/ben_bernanke.html
中央銀行総裁が備えるべき資質(経済データやマクロ経済への知識に精通しているか、外国やウォールストリートから信用を勝ち得ているか・・・etc)をバーナンキが有しているかどうかを採点。結果は・・・上々といったところか(今後の仕事ぶりを見てみないことには結論を下せないってところもありますかね)。
Ben Bernanke, economist
http://www.marginalrevolution.com/marginalrevolution/2005/10/ben_bernanke_ec.html
バーナンキの学者としての業績の簡単な紹介。バーナンキの経済学への貢献として、irreversible investment(不可逆的投資)の理論/金融政策のトランスミッションメカニズムとしてのクレジット・チャネルの重要性を提唱したこと/インフレーション・ターゲティング研究/大恐慌(Great Depression)研究/グローバル貯蓄過剰論(The global savings glut)、の計5つの業績を挙げる。
EconLog;
Bernanke's Nomination
http://econlog.econlib.org/archives/2005/10/bernankes_nomin.html
バーナンキは(リバタリアンにとっても)中央銀行の長としてこれ以上望み得ないほど最高(適任)の人物である。歴史上何度も繰り返されてきた金融政策の失敗(とその結果としての景気の乱高下)を前にして、私(Caplan)は(リバタリアンの立場から)フリーバンキング論を主張してきたけれども、バーナンキはインフレターゲットを設定することによって(政策意図を明確化することで)金融政策の先行きに関する不確実性を可能な限り除去し、その結果としてインフレ率の低位安定を実現させ、もって中央銀行が経済の撹乱要因となることを避けようと努めてきた。多くの点で意見の違いはあろうが、バーナンキを(かつての教師への配慮という理由からではなくして)賞賛するのはそのためである。
Econbrowser;
Ben Bernanke: new Fed chair
http://www.econbrowser.com/archives/2005/10/ben_bernanke_ne.html
バーナンキが次期FRB議長に選任されたということは大変喜ばしいことだ。バーナンキはFedの政策研究―Fedが大不況(the Great Depression)や戦後の景気循環に及ぼした影響について―を通じてアカデミックの世界に多大なる貢献をしてきた。バーナンキ新体制のFRBに対してもこれまで同様学者しての特権―金融政策を好き勝手に、けちょんけちょんに貶す=批判する―を振り回すことになるだろうけれども、批判をぶつけるに際してバーナンキの業績(=上記のアカデミックな貢献)・人柄に対する敬意は忘れないつもりである。
New Economist;
Ben Bernanke to replace Greenspan as Fed Governor
http://neweconomist.blogs.com/new_economist/2005/10/ben_bernanke_to.html
ついにホワイトハウスにおいて良識が勝つときがきた。これまでのホワイトハウスの政治的任命職に関する判断には疑問符がつくものばかりであったけれども、今回次期FRB議長としてバーナンキが指名されたのである(注;記事は正式な指名前に書かれたもの。よって、バーナンキ指名の可能性が濃厚になってきた、とするのが正しい)。バーナンキはグリーンスパンの後任候補の最右翼と目されてきており(経済学者としてだけではなく、FRB理事として/CEA委員長として実務の世界でも実績を積み上げてきたことの結果でもある)、グリーンスパンとは違って党派的色合いの薄い(またインフレターゲティングの導入に積極的な)人物である(FRB議長として誰もが納得する指名だろう)。今後の活躍に是非とも期待したいところだ。
Bernanke round-up
http://neweconomist.blogs.com/new_economist/2005/10/bernanke_media_.html
バーナンキ指名に関する識者・各種メディアの意見を紹介。
〔好意的な見解;Ben Bernanke Has a Lot Going for Him to Make It(John M. Berry)〕
バーナンキはFRB議長として幾分か有利な(望ましい)立場に置かれている。かつてFRB理事を務めていたことから、(1)FOMCの他のメンバーの考えについてある程度の理解を有していること、(2)FRB議長としてFOMCメンバー間の意見の一致をどのようにして図るか、その(グリーンスパンによる)手際を間近で観察する機会が得られたこと。FOMCメンバーとの間に政策目標に関する意見の一致―インフレをコントロール下に置くこと(low and stable inflationの実現を最優先課題とすること)、また安定した低インフレは雇用の最大化(maximizing sustainable employment)にも貢献すること―が存在すること。アメリカ経済の現状は決して予断を許さない状況ではあるけれども、(就任わずか2ヵ月後に株価大暴落=「ブラックマンデー」に対処せねばならなかった)グリーンスパンに比べればバーナンキにはFRB議長の仕事に慣れるだけの時間的余裕があること、等々。
〔否定的な見解;Transparency Wins, Fed Leaks Lose, With Bernanke(Caroline Baum)〕
グリーンスパンと比較して、学者としての経験からバーナンキは経済モデルに頼りがちである(モデル思考に親しみやすい)。モデル思考が問題だということの意味は、現実の経済はモデルが予測するようにはいかないということ/モデルから導かれる予測が結果として誤りであったということでは必ずしもない。モデルに過度に依存することが耐久期間を過ぎたモデルにいつまでもしがみついてしまう危険性を孕んでいるがゆえに問題なのである。
Economist's View;
Nomination for Next Fed Chair: Ben Bernanke
http://economistsview.typepad.com/economistsview/2005/10/nomination_for_.html
バーナンキとグリーンスパンの違いは何だろうか? バーナンキはグリーンスパンのように政治的な議論には口を突っ込まないだろうし(バーナンキが共和党支持者だということは、多くの仕事をともにした同僚(ガートラー、ブラインダー)でさえも長らくの間全く気付かなかった。バーナンキは党派的な意見を主張するのを避ける傾向がある;中央銀行総裁としては望ましい性質ではある)、グリーンスパンが嫌ったインフレーション・ターゲティングの導入に対して(=政策目標をヨリ明確にするために、また更なる透明性の向上のために)ヨリ積極的であるだろう。
Will the Bernanke Fed Retain Its Inflation Fighting Credentials?
http://economistsview.typepad.com/economistsview/2005/10/will_the_bernan.html
バーナンキはグリーンスパンほどにはインフレ(あるいはインフレの加速)の阻止にコミットしないのではないかとの疑念に対して、バーナンキ自身のスピーチ“A Perspective on Inflation Targeting”を引用して反論。1970年代のGreat Inflationは突発的な石油価格の高騰によって引き起こされた(不可抗力の)現象ではなく、過度の金融緩和とその結果としてのFedのインフレをコントロールする能力(あるいは意思)への(国民からの)信認の崩壊によって引き起こされた(人為的な)惨事であった。Fedのインフレ・ファイターとしての信認を回復するために(ヴォルカー時代のディスインフレ過程において)アメリカ経済が払わざるを得なかった犠牲も併せて鑑みるに、中央銀行のインフレ阻止へのコミット(とそれを裏付ける行動)の重要性は論じるまでもないだろう。“in conducting stabilization policy, the central bank must also maintain a strong commitment to keeping inflation--and, hence, public expectations of inflation--firmly under control”(景気安定化政策としての金融政策を効果的なものたらしめんとするにあたっては、インフレーションを(そして民間経済主体のインフレ期待を)低位安定させんとする中央銀行の力強いコミットメントが必要不可欠になってくる)。
Bernanke on Interest Rates, Monetary Aggregates, and How Monetary Policy Impacts the Economy
http://economistsview.typepad.com/economistsview/2005/10/bernanke_on_int.html
Ben Bernanke: We Cannot Practice Safe Popping
http://economistsview.typepad.com/economistsview/2005/10/ben_bernanke_we.html
Should FOMC Meetings be Televised?
http://economistsview.typepad.com/economistsview/2005/10/should_fomc_mee.html
FOMCでの政策決定過程をヨリ透明化するための手段としてテレビ中継を導入(FOMCでの議論の様子をテレビで放送)すべきかどうかについてバーナンキとウィリアム・プールの所説を紹介。ヨリ多くの情報が提供されることによってその分市場によるFedの政策意図への理解が深まるとは単純にはいえず、逆に余計な情報や誤解を招きかねない(解釈の余地のある)表現が画面を通じて直に伝わることで市場の判断を歪めてしまう恐れなしとはしない(バーナンキ)/テレビ中継によってFOMCのconfidentiality(=秘密性、秘匿性)が損なわれるために、匿名を条件として個別企業から提供される情報がもはや得られなくなってしまい(←その結果として経済予測の精度が損なわれるかもしれない)、また政策委員がテレビ(の奥にいる聴衆)を意識してしまうがために(テレビの存在がなければ心置きなく率直に議論できるはずであった)物議をかもしかねない話題(失業率の上昇を招きかねない政策決定etc)を議論の俎上に乗せることを厭うようになりかねない(プール)、として両者ともにFOMCへのテレビ中継の導入には否定的。ただし、プールはテレビ中継によって提供される情報が(視聴者の誤解や無理解が原因となって)意思決定の撹乱要因となりかねない(=バーナンキの見解)との議論には組しない(テレビを通じてFOMCの様子をチェックするような人間は専門家だけであり、彼らが政策委員の一挙一動に振り回されるようなことはないだろう)。
Will Bernanke Speak Up?
http://economistsview.typepad.com/economistsview/2005/10/will_bernanke_s.html
FRB議長は国民経済全体の奉仕者であるべきであって、個人的な考えを前面に押し出し、またそれ(=党派的な個人的見解)を具現するためにその職業的立場を利用するべきではない。バーナンキが共和党員であるとか財政赤字削減論者であるとかいった党派的な立ち位置はFRB議長としての彼の活動とは一切関係のないことだ。FRB議長が財政赤字や政府債務の水準に関して発言することが許されるのは、財政の状況がマクロ経済、ひいては金融政策運営に影響を及ぼす可能性があるときに限定されるべきであるし、バーナンキもその点は(彼の過去の発言から判断して)十分にわきまえているだろう。
Greg Mankiw: Questions Bernanke Must Be Asking Himself
http://economistsview.typepad.com/economistsview/2005/10/greg_mankiw_que.html
マンキューによるバーナンキ宛ての3つの質問
―FRB議長としてバーナンキが自問自答すべきとマンキューが考える質問―。
①如何にしてインフレーション・ターゲティングの導入に道を開くことができるであろうか
(How can I advance inflation targeting? )
→グリーンスパンは目標とすべきインフレ率(あるいはそのレンジ)を数字として明確に掲げることには反対の意向を示したけれども(そして実際に特定のインフレ率の達成にコミットすることはなかったけれども)、暗黙ながらも1〜2%のインフレ率を目標として政策運営に従事していた節がある。インフレーション・ターゲティングの導入は金融政策運営の変更(ないしレジームの転換)というよりも市場とのコミュニケーション手法の変更(グリーンスパン流の“covert inflation targeting”からexplicit inflation targetingへ/目標とするインフレ率をグリーンスパン一個人の頭の中から万人の眼前に曝け出す)として捉えられるべきであり、実際の政策運営(やFOMCの声明等)を通じて中長期的なインフレ予測(ならびにFOMCメンバーの想定するインフレ率の目標)を市場に伝達することで徐々にインタゲ導入の足場が固められていくことであろう(大々的にインタゲ導入を宣言する必要はないかもしれない)。
②FRB議長としてどの範囲の議論にまで口出しすべきであろうか
(How broadly should I offer opinions?)
→ FRBの政治的な(制度的な)独立性(←議会によって付与されたものであり、また議会によって容易に剥奪されるものである)を危険な目に晒さないためにも、FRB議長としては金融政策や金融システムの動向に関連する議論、経済学者の間に広範なコンセンサスが存在する議論等党派的・感情的な対立を引き起こす蓋然性の少ない議論への参加に限定すべきである。
③FRB議長としての私個人に世間一般の人々からどれだけの注目を集めるべきであろうか
(How high a profile should I adopt?)
→金融政策はFRB議長一人の個人プレーで決定されるべき性格のものではなく、FRBという制度(そしてその背後にいる多くの専門家)によって実施・運営されるものである(し、そうあるべきだ)。バーナンキはFRB議長として退屈な、何の面白みのない人間を演じ(大衆から注目を集めるような派手な行動は慎むべきである)、大衆の注目を個人(例.グリーンスパン前議長)から制度としてのFRBへ差し向けるよう(決して目立つことなく)励むべきだ。
詳細はGregory Mankiw、“A Letter to Ben Bernanke(pdf)”を参照のこと(体裁は違えど内容はほぼ同じ)。
The Greenspan Succession(by P.Krugman); http://www.pkarchive.org/column/012505.html(いちご経済板にてcloudyさんがご紹介されておられました。今回の議長指名をうけての記事じゃありませんが)
Bernanke and the Bubble(by P.Krugman);http://donkeyodtoo.blogspot.com/2005/10/bernanke-and-bubble-by-paul-krugman.html(gachapinfanさんによる邦訳と照らし合わせてみるにどうやら原文のようです。なんとなく後ろめたいけれども・・・)
svnseeds’ ghoti!(svnseedsさん。バーナンキがFRB理事時代に行ったスピーチへのリンクをまとめておられます。一番のお奨めです);http://d.hatena.ne.jp/svnseeds/20051025
おまけ(祭りの様子を冷静に分析されている方々):
Baatarismの溜息通信(Baatarismさん);http://d.hatena.ne.jp/Baatarism/20051025
Apple100% blog(fhvbwxさん。「バーナンキ祭り」の樹形図);http://d.hatena.ne.jp/fhvbwx/20051025/p4
バーナンキ!!
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