クルーグマンの『一般理論』論
Brad DeLong's Semi-Daily Journal;
Krugman's Intro to Keynes's General Theory
http://delong.typepad.com/sdj/2006/03/krugmans_intro_.html
1.Economies can and often do suffer from an overall lack of demand, which leads to involuntary unemployment((資本主義)経済は、総需要(有効需要)の不足によって非自発的失業を伴う不況に苦しめられることがありうる。また、実際にも苦しめられることがある)
2.The economy’s automatic tendency to correct shortfalls in demand, if it exists at all, operates slowly and painfully(資本主義経済(あるいは市場経済)システムに内在する総需要の不足を自動的に解消する能力(機能)―そういった機能が備わっていると仮定して―の働きは、緩慢なものであり、その調整過程は多くの痛みを伴うものとなるであろう)
3.Government policies to increase demand, by contrast, can reduce unemployment quickly(総需要の増加を目的とする政府の(財政・金融)政策は(市場の自律的な調整機能に委ねることと比較して)非自発的失業の問題をヨリ速やかに解決し得る)
4.Sometimes increasing the money supply won’t be enough to persuade the private sector to spend more, and government spending must step into the breach(金融緩和政策は時に総需要不足を解消する(=民間部門にヨリ多く支出させる)ための手段としては十分ではない。金融政策が不況への対処策として有効でない場合には政府支出の調整(=財政政策)に頼らねばならない)
3番目の議論はケインズの楽観を*1、そして4番目の議論はケインズの悲観を*2、それぞれ反映していると見なすことができるでしょうか。*3
クルーグマンの『一般理論』解説のヨリ詳しい内容に関しましてはbewaadさんの流暢な邦訳をご覧下さいませ(いや〜、助かりますm()m )。上掲の訳はいい加減(=意訳・・・でもないか)ですんで。
Tyler Cowenによる注釈(不況対策としての財政出動は『一般理論』が出版された1936年以前にヴァイナー等によって積極的に提唱されていたetc)もどうぞ。
Marginal Revolution;
http://www.marginalrevolution.com/marginalrevolution/2006/03/krugmans_introd.html
(追記)
Economist's View;
Paul Krugman's Introduction to Keynes' General Theory
クルーグマンの『一般理論』解説<完全版>が紹介されております(The Unofficial Paul Krugman Web Pageにもアップされてます)。これ、『一般理論』新版の正真正銘のイントロだったんですね。
The General Theory of Employment, Interest and Money (Collected Works of Keynes)
- 作者: J. Keynes
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*1:現下の景気停滞、そして繰り返される景気循環が招く経済の不安定性を解決するためには、経済システムを根本的に(資本主義(あるいは市場経済)から社会主義(あるいは計画経済)へと)変革するようなラディカルな手法に打って出る必要はなく、もっと手軽で技術的な対処法(=政府による総需要管理政策)で十分であるとケインズは考えた。大量失業の現実を前にして、当時知識人層(あるいは分別ある人々)の間では資本主義経済システムへの失望の念(裏面での生産手段の国有化への期待)が強まっていた。 A reasonable man might well have concluded that capitalism had failed, and that only... the nationalization of the means of production - could restore economic sanity
*2:金融政策が無効である理由=民間実物投資が利子率に対して非弾力的=有望な(収益性のある)投資プロジェクトが欠如している(あるいは今後ますます有望なプロジェクト機会が失われていく)ため=長期停滞論と呼ばれるもの(=ハンセン流のセキュラー・スタグネーション説。似たような議論としてこちらなどを参照していただければ。)
*3:クルーグマンは2つの理由(資本蓄積が進展する結果としての(一方的な)収穫逓減を否定、プラスの期待インフレ率の存在)を挙げて4番目の議論に否定的な意見、つまりは金融政策は景気安定化政策として有効であると主張している。