「日本経済が「Lost Decade」に陥ることを回避する上で、日本の政策当局者は20年前の時点でどういった手段の採用を考慮に入れるべきだったのでしょうか?」
●“In his recent Financial Times column, Larry Summers compares the U.S. economy today to the Japanese economy in the 1990s. Twenty years ago, what steps should Japanese policymakers have considered that would have helped avert the "Lost Decade" economic outcome?”(Quora)。コーエン経由。
<質問>
つい最近のフィナンシャルタイムズのコラムでローレンス・サマーズは現下のアメリカ経済を90年代の日本経済になぞらえています。そこで質問です。日本経済が「Lost Decade」に陥ることを回避する上で、日本の政策当局者は20年前の時点でどういった手段の採用を考慮に入れるべきだったのでしょうか?
<サマーズの回答>
今後アメリカ経済が直面する可能性のある最も重要なリスクは「90年代の日本」が経験した失われた10年のシナリオであるのだから、日本(の政策当局者)が犯した誤りは何であり、それ(日本が犯した誤り)が現在のアメリカ経済について交わされている議論とどのように関係するかを問うことは自然なことであると言えよう。
このことに関連して以下で目につくポイントをいくつか挙げておこう。
1.日本はアメリカよりもずっと規模の大きなバブルを経験した。株価や不動産価格は20年前のピーク時と比べて80%ポイントも下落した。この点、アメリカは幸運であると言える。
2.日本(の政策当局者)は勢いのある経済成長が定着するまで総需要刺激策を継続するというアプローチをとらなかった。総需要刺激策は断続的にしか行われず、さらには日本の政策当局者は誤ったタイミングで勝利宣言を行ったのであった。このことは現在の我々が抱える危険でもある。オバマ政権による昨秋の
所得税給与税(payroll tax)*1減税の決定は重要なものであって、今年度もまた同じように所得税給与税の減税が実施される必要があるだろう。3.日本は金融システムが抱える問題に対処する上で遅れをとった。この点アメリカは世界的に見ても非常に迅速な対応を見せた。これについては評価できる。一方、銀行の(バランスシートの)健全性を維持することに重点を置くべきか、それとも銀行貸出(信用)の促進に重点を置くべきか、という問題があるが、日本は誤って前者(銀行の健全性の維持を重視)を選択することになった。この日本の経験はアメリカにとって有益な教訓となるかもしれない。
(追記)<質問>で触れられているサマーズのコラムは以下。
●Lawrence Summers, “How to avoid our own lost decade”(Financial Times, June 12, 2011)
ワシントンポストに寄稿されたバージョン(内容は同じ)はこちら、ロイターによる邦訳はこちら。
*1:Proppinさんの指摘に基づき修正。ご指摘感謝。