「デフレ克服に向けて―黒田日銀新体制最初の一歩」
●Matthew Yglesias, “BOJ's Kuroda Vows To Use "Every Means Available" To Fight Deflation”(Moneybox, April 4, 2013)
本日、黒田東彦総裁率いる日本銀行新体制下で初めての金融政策決定会合が開催され、安倍晋三首相が掲げる2%のインフレ目標(消費者物価で見て前年比上昇率2%の「物価安定の目標」)を達成するために、マネタリーベースを2倍に拡大するプランが発表された。中でも特に興味深いのは決定会合後の記者会見の場で黒田総裁が語った次の発言である。「これまでのように漸進的に少しずつ量的・質的に緩和を拡大するやりかたではデフレ脱却を達成できない。デフレ脱却を実現するためには現在取り得るあらゆる手段を動員する必要がある」。
脅し文句(tough talk)とも言えるこの発言は、期待への働きかけを意図した金融政策の推進を後押ししてきた人々―私自身もそうだが―がこれまで(セントラルバンカーの口からこの種の発言が飛び出さないものかと)待ち望んできた類のものである。期待への働きかけを意図した金融政策の支持者に対しては「お前らは反証不可能な主張を行っている」としてこれまで批判がなされてきたが、その批判は正しいとは思わない。今回黒田総裁は確固たる無条件のコミットメントに乗り出す格好となった。単にマネタリーベースを劇的に拡大するというだけではない。マネタリーベースの劇的な拡大が(金融市場調節の適切な操作目標としてマネタリーベースに着目する、という政策転換と結び付けられているというのではなくて)物価安定の目標を達成するために『「現在取り得るあらゆる手段」を動員する』との保証と劇的なかたちで結び付けられているのである。日本銀行による今回の決定を受けても今後の日本の物価水準の見通しを上方修正しない人間がいるとすれば、こう言うしかない。「あんたバカぁ?」、と。
今や問題は、このインフレ的な政策(inflationary policies)によって−実体経済が拡大するとすれば−どの程度実体経済の拡大につながるか、という点にある。
(追記)
●“「量的・質的金融緩和」の導入について(pdf)”(日本銀行、2013年4月4日)