ここがヘンだよ バジョットさん


レギュラー先生のつぶやき、2連チャン。

●“ここがヘンだよ「みんなの党」 その1 〜内実は「バラマキ」の成長戦略を斬る〜”(本石町探偵団(JBPress), 2010年07月23日)


中小企業向けローン債権の買い取りは銀行による審査基準を緩めることにつながり、その結果として不健全企業の温存につながると主張する一方で(中小企業向けローン債権の買い取りは構造改革(あるいは創造的破壊)を阻害するって言いたいんだろうワンね)、「不良化しそうな債権が現金に振り替われば貸し出し余力は高まる。ただし、企業の資金需要は乏しく、現金は国債運用に回ってしまう公算が大きい」と主張するバジョットさん。ローン債権の売却によって銀行が手にした余裕資金が国債運用に回されるなら不健全企業の温存につながるわけないワンね。

中小企業向けローン債権の買い取りは、銀行のモラルハザードを招くからダメ、加えて中小企業向けローン債権を買い取っても「企業の資金需要」がないから銀行貸出しは増えない=マネーサプライは増加しないんでダメ、と主張したいんだろうワンけど、2つのダメが両立することはないワンね。どっちか一方のダメに議論の焦点を絞るべきだったと思うワン。

中小企業向けローン債権の買い取りは銀行のモラルハザードを招くからダメ、ということではなくて、既存の貸出しのうち不良債権化したローンから優先的に売却するよう銀行に促すことになるからダメと主張されたいという可能性もあるワンね。でも「銀行部門へのバラマキは企業審査を甘くする。金融システムの企業選別の努力は損なわれ、不健全企業が温存されよう。健全な企業は成長が阻害され、企業のチャレンジ精神は減退する。貸出債権の買い取りには、そんな副作用が潜んでいるのだ。」ともあるワンね。

↑で引用した文章は、中小企業向けローン債権の買い取りが銀行による新規貸出しの判断に対して与えるであろう影響ワンよね。

中小企業向けローン債権の買い取りが「企業審査を甘くする。金融システムの企業選別の努力は損なわれ、不健全企業が温存」するようなかたちで銀行の新規貸出しに影響を与えるとすれば、銀行が中小企業向けローン債権を売却して手にした余裕資金は「不健全企業」への貸出しに回るということワンね。「何のことはない、20兆円の貸し出しはほぼ同額の国債に化けるだけだ」とはならないワンね、中小企業向けローン債権の買い取りが銀行のモラルハザードをもたらすという議論にこだわるワンなら。

そういうわけで、量的緩和に効果なしって主張を固守するつもりなら、矛盾を回避するためには、中小企業向けローン債権の買い取りが「企業審査を甘くする。金融システムの企業選別の努力は損なわれ、不健全企業が温存され」るという議論を捨てる必要があるワンね。

あと、先のつぶやきでバジョットさんの「不良化しそうな債権が現金に振り替われば貸し出し余力は高まる。ただし、企業の資金需要は乏しく、現金は国債運用に回ってしまう公算が大きい」という主張を、中小企業向けローン債権を買い取っても「企業の資金需要」がないから銀行貸出しは増えない=マネーサプライは増加しないんでダメという議論であるとまとめたワンけど、ちょっと不正確だったワンね。銀行が手元に保有する余裕資金が国債運用に回るならマネーサプライ増えるワンし、国債利回りも低下するだろうワンから(ポートフォリオ・リバランス効果が働くとすれば、それ以外の債券利回りの低下圧力・株価上昇圧力につながるだろうワンし、ポートフォリオ上での資産代替が進む過程で外債に対する需要が増えれば円安圧力につながる可能性もあるワンね)、(そうでない場合と比べれば)総需要の刺激にもつながるだろうワンね。「国債運用に回る」とするのではなくて「準備預金にブタ積みされる」と書き換えれば、量的緩和に効果なしって主張の基盤をより一層強固にすることができると思うワンw

矛盾を回避する道はもう一つだけ残されてるワンね。中小企業向けローン債権の買い取りは銀行貸出しの伸びにつながる=マネーサプライの増加につながる、という点を認める必要が出てくるワンけど、その銀行貸出しは「不健全企業」向けのローンのかたちをとるというように銀行貸出しの「質」を問題視する論法ワンね。

どちらの道を選ぶかはお好みによるワンけど、先にもつぶやいたように、中小企業向けローン債権の買い取りは、銀行のモラルハザードを招くからダメであり、また中小企業向けローン債権を買い取っても「企業の資金需要」がないから金融緩和の効果なし(=量的緩和に効果なし)でダメ、というように2つのダメを同時に主張することはできないワンね。

あと、中小企業向けローン債権の買い取りプランは日銀の(手段の)独立性を侵害するものだとの指摘ワンけど、政府は日銀に対して買い取りを「要請できる」ってだけワンでしょ? 詳しい中身は知らないワンけど、政府に対して日銀が「NO!」と主張する権利は認められてるワンでしょ?

「『物価安定』という目標を達成する上で、そのような手段を受け入れることはできません」と反論すればいいだけじゃないワンの?

ただし、みんなの党の案では『物価安定』=具体的なインフレの目標値を公表するインタゲ、みたいワンから、日銀側の反論に筋が通っているかどうかは具体的な数値目標と照らして判断すべきということになるワンね。

明らかに目標値を下回っているのに「『物価安定』という目標を達成する上で、そのような手段を受け入れることはできません」なんて反論しても聞き入れてもらえないだろうワンね。つまりは、説明責任をきっちりと果たすよう促す仕組み=インタゲ、ということになるワンね。