自然失業率の成長循環仮説

アカロフ中谷巌命題(=長期的にも(あるレンジの範囲内であれば)インフレと失業率のトレードオフ(=右下がりのフィリップスカーブ)が存在する)について田中先生より頂戴しました貴重なコメントを改めてエントリーさせていただきます(二度目になりますか)。以下田中先生コメント(に少しばかり編集を加えたもの)。

アカロフ中谷巌命題をかりにフォーマルなモデルにするにはどうすればいいかちょっとあくまでもネタ的に考えてみたんだけど、彼らの発想を自然失業率の「成長循環」と考えるのはどうかな、と思ってるのよ。特に中谷巌モデルのミクロ的基礎づけとして考えていくといいわけで、彼の『マクロ経済学入門』の当該箇所(経済セミナーの方は未見)の自然失業率が金融政策に影響されますよ、という図表をみると自然失業率事態が一種の循環図みたいに描かれている。ネタとして追求していくので、例えばこの図はすぐにピピピとヒックシアン的に『景気循環論』の図に近いものを感じるし、よりストレートには捕食者・被捕食者(労働者と資本家)の成長循環論を描いたグッドウィンのモデルの循環図を想起させない? グッドウィンの成長循環モデルの基本構造を理解して、アカロフ中谷巌命題をそこにリロードしていくという方向で考えてみると面白いかも。自然失業率の成長循環仮説というのはどうかな。ヨーロッパのいくつかの国に適合するし(ブランシャールの最近のヨーロッパの雇用問題論文参照http://www.arts.cornell.edu/econ/seminars/blanchard.pap.pdf 簡略版;http://econ-www.mit.edu/faculty/download_pdf.php?id=932)。

グッドウィンの成長循環モデルは

A Growth Cycle, 1967, in Feinstein, editor, Socialism, Capitalism and Economic Growth

翻訳があったはず(これ(『非線形経済動学』)だと思われます。未確認ですけど(編集者))。簡単な解説は下。

http://cepa.newschool.edu/~het/essays/multacc/goodw2.htm                       

*直接関係ないかどうか全然考えてないけれども成長循環的モデルとしては清滝・ムーアモデルなんかも同じ構造。『現代の経済理論』を参照。

ここらへんまでは真の師匠のところでアイディアだけは用意してたけど先にいかなかったなあ。見込みある方向かどうかわからないけれどもネタなんで暴走。笑

捕食者・被捕食者モデルの原型はLotka-Volterra モデルだからこれの数学的な構造を理解するには、僕は『力学系入門』を使いました。もちろんこれにアカロフ中谷巌命題をリロードしようなんて発想は当時はなかったわけで。公平賃金仮説というか高田保馬の勢力理論の基礎をどうするかの延長で考えていただけでして。

あとそんなにいい本じゃないけどチープなりに初期のこの手の景気循環論のサーベイとしては、マリーノーの『ケインズ以後の景気循環論』がいいっす。

なんとかミクロ的基礎がある自然失業率の成長循環仮説をモデル化できないかなあ。いま書き下ろし(しかも一ヶ月で書く!)を抱えているのであまり余裕がないのでよろすく!

最後の一文が一体何を意味しているのかは皆目見当がつきませんけれども(笑 ・・・・、田中先生誠にありがとうございましたm()m。

新しく「アカロフ・中谷命題」なるカテゴリー(「自然失業率の成長循環仮説」や「アカロフ・中谷・グッドウィン・ヒックス命題」としたいところですが長すぎますので)を設けましたけれども、あくまでもネタ(笑)なんで今後進展があるかもしれないし、これが最後のエントリーになるかもしれません。ひとまずマリーノー本(手配済み)読んでグッドウィンの成長循環モデルの枠組みでも概観しとこうかと(グッドウィン本ももちろん読みますが)。浅田統一郎先生の本も読んで勉強しようかな。あくまでネタですからね、ネタ・・・。