Cowen

コーエン著「中東和平に向けたロードマップ? 〜公共選択論の観点から〜」

●Tyler Cowen(2004), “A Road Map to Middle Eastern Peace? - A Public Choice Perspective”(Public Choice, Vol. 118, No. 1/2, pp. 1-10)/〔2022年6月23日〕訳を全面的に修正。 イスラエルとパレスチナの間で和平がなかなか達成されずにいるのは、な…

コーエンの新訳が近々出版されるらしいよ

◎タイラー・コーエン著/石垣尚志*1訳 『アメリカはアートをどのように支援してきたか−芸術文化支援の創造的成功』(ミネルヴァ書房、2013年07月刊行予定)以下、出版元であるミネルヴァ書房のHPより引用。 芸術文化の振興に関して、対立するふたつの立場があ…

グローバリゼーション反対の理由 〜自己利益と・・・〜

●Tyler Cowen, “Culture in the Global Economy(pdf)”(The 2000 Hans L Zetterberg Lecture, City University Press)以下、pp.48〜49より抜粋訳。 質問:多くの人々がグローバリゼーションに反対する理由はグローバリゼーション(≒貿易の自由化)の進展…

「ストーリーを疑う;ストーリーとうまく付き合う方法(4)」

コーエンのTED講演の訳続き(その(1)/ その(2)/ その(3))。ストーリーが抱える第3の問題点(「市場で(広告などのかたちをとって)広く流布したり政治家が声高に語るようなストーリーは一定のバイアスを抱えている可能性が高い」)について。次の(5…

「ストーリーを疑う;ストーリーとうまく付き合う方法(3)」

コーエンのTED講演の訳続き(その(1) / その(2))。ストーリーが抱える第2の問題点(「ストーリーは時に相反する複数の機能を果たす」)について。 次に、ストーリーが抱える第2の問題に移りましょう。私たちは一度に−あるいは一日のうちに、あるいは一…

「ストーリーを疑う;ストーリーとうまく付き合う方法(2)」

コーエンのTED講演の訳続き(その(1)はこちら)。ストーリーが抱える第1の問題点(「ストーリーはあまりにもシンプルすぎる」)について。 さて、それではストーリーにどっぷりと寄りかかって思考することにはどのような問題があるのでしょうか? 多くの人…

「ストーリーを疑う;ストーリーとうまく付き合う方法(1)」

コーエンのTED講演を訳してみる。5回くらいに分けて訳す予定。所々こちら側で勝手に言葉を補ったり付け加えている箇所もあるのでそのあたりよろしゅう。 何の変哲もない普通の時代にあっては経済学者のブログが大きく注目されることはおそらくないでしょう。…

ストーリーを疑う;ストーリーとうまく付き合う方法(要点まとめ)

タイラー・コーエンが2009年11月5日に行ったTED講演。講演の主要なテーマは「ストーリー(あるいはストーリーを通じて思考すること)の危険性」。以下のブログエントリーで講演内容が文字に起こされているので(ただし英語)興味のある向きは参照されたし。●…

公共選択論を学ぶ上で何を読んだらいいか;推薦文献リスト

●Tyler Cowen, “Public choice: what to read”(Marginal Revolution, January 20, 2011) Jonathan G がこんな質問を投げかけている。 公共選択論の概念のうちでリベラルな人々があまり馴染みのない概念としてはどんなものがあるだろうか? よかったら(そ…

総需要を刺激するためにどうして金融政策が使用されそうにないんだろうか?

●Tyler Cowen, “Why aren’t we using monetary policy to stimulate aggregate demand?”(Marginal Revolution, September 19, 2010)ニューヨークタイムズへの寄稿記事(=“Can the Fed Offer a Reason to Cheer?”)に対する補足のエントリー。この寄稿記事…

公的債務についてドイツが知っていること

●Tyler Cowen, “What Germany knows about debt”(Marginal Revolution, July 18, 2010)NYTに寄稿された記事への補足。night_in_tunisiaさんによる邦訳も参照のこと。NYTの記事からの引用部分の訳については、night_in_tunisiaさんの訳を利用させていただい…

コーエン著「自己制御 vs 自己解放」(その5)

●Tyler Cowen(1991), “Self-Constraint Versus Self-Liberation(pdf)”(Ethics, Vol. 101, No. 2, pp. 360-373)第7節 「Constraint and Liberation as collective goods」/ 第8節 「Concluding remarks」の訳です。 (その1)〜(その5)を一つにまとめ…

コーエン著「自己制御 vs 自己解放」(その3)

●Tyler Cowen(1991), “Self-Constraint Versus Self-Liberation(pdf)”(Ethics, Vol. 101, No. 2, pp. 360-373)第4節 「Can the rule-oriented self be too strong ?」の訳です。この節は長めなので今回の訳はこの一節のみ。 Can the rule-oriented sel…

コーエン著「自己制御 vs 自己解放」(その4)

●Tyler Cowen(1991), “Self-Constraint Versus Self-Liberation(pdf)”(Ethics, Vol. 101, No. 2, pp. 360-373)第5節 「Is addiction always the result of weakness of will ?」/ 第6節 「Self-management and markets」の訳です。次回エントリーがラ…

コーエン著「自己制御 vs 自己解放」(その2)

●Tyler Cowen(1991), “Self-Constraint Versus Self-Liberation(pdf)”(Ethics, Vol. 101, No. 2, pp. 360-373)第2節 「How do the two selves differ ?」/ 第3節 「Can the impulsive self engage in strategic behavior ?」の訳です。 How do the two…

コーエン著「自己制御 vs 自己解放」(その1)

●Tyler Cowen(1991), “Self-Constraint Versus Self-Liberation(pdf)”(Ethics, Vol. 101, No. 2, pp. 360-373) 今回はイントロダクションだけしか訳していませんが、1エントリーごとに大体2節ずつ訳していって全部訳し終えたら何かしらの形で一つにま…

コーエン著「対立の可能性を秘めた世界秩序の経済効果」

●Tyler Cowen(1990), “Economic Effects of a Conflict-Prone World Order”(Public Choice, Vol. 64, No. 2, pp. 121-134) 1.Introduction(はじめに)国際紛争や戦争の経済効果を巡っては今日までに激しい議論がたたかわされてきた。軍国主義(militar…

市場の失敗? 政策の失敗?

●Tyler Cowen, “Bailout of Long-Term Capital: A Bad Precedent?”(New York Times, December 26, 2008) THE financial crisis is a result of many bad decisions, but one of them hasn’t received enough attention: the 1998 bailout of the Long-Term…

フィージビリティーとユートピア

●Tyler Cowen(2007), “The importance of Defining the Feasible Set”(Economics and Philosophy, vol.23, pp.1-14) Abstract How should we define the feasible set? Even when individuals agree on facts and values, as traditionally construed, d…

ケインズ『一般理論』ネット読書会第1回目

始まったよ。●Tyler Cowen, “General Theory, chapters one and two”(Marginal Revolution, December 8, 2008) I see three main themes in the book as a whole:1. Income effects are more important than substitution effects.2. Expectations matter.…

ネット読書会

●Tyler Cowen, “New MR book club - Keynes's *General Theory*”(Marginal Revolution, November 30, 2008) コーエン教授よりネット読書会へのお誘いのお知らせが届きました。以下抜粋。 読書会の第1回目は12月8日月曜日を予定しております。 テキストは先…

福祉国家の現実と見過ごされた存在

●Tyler Cowen(2002), “Does the Welfare State Help the Poor?(doc)”(Social Philosophy and Policy, vol.19(1), pp.36-54) I look first at how much the welfare state transfers to the poor, which turns out to be a surprisingly small sum, rel…

自動販売機の経済学

●Tyler Cowen, “The economics of vending machines”(Marginal Revolution, May 20, 2008) Japan has so many, but why? ・・・(略)・・・First we must look to the shortage of storage space in homes. I suspect few Japanese want to buy big piles o…

右翼、左翼、そしてシバキ上げ主義者

●Tyler Cowen, “Move on -- this isn't true here”(Marginal Revolution, July 26, 2008 ) I have a simple model of how some people -- but by no means all -- process political issues. Occasionally the real force behind a political ideology is …

stationary banditとしてのタリバン

●“When the state does not enforce property rights”(Dani Rodrik's weblog, July 14, 2008) タリバンがオルソン言うところのstationary bandit*1として活動し始めたということかしらん。何がきっかけで割引率が低下(=視野が長期化)したんだろう? Zir…

Cowenの「多様な私」論

コーウェン(Tyler Cowen)の「多様な私」論は師であるブキャナン(James Buchanan)やシェリング(Thomas Schelling)への(批判的な)応答といった側面もあるのではないかと勝手に推測。ブキャナンへの応答という点に関してはまだ考えがはっきりしていないけれ…

アダム・スミス

アダム・スミス―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書)作者: 堂目卓生出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/03/01メディア: 新書購入: 8人 クリック: 169回この商品を含むブログ (114件) を見る 書店で序章と第1章(出だしを少々)を立ち読みし…

田中秀臣著『不謹慎な経済学』

不謹慎な経済学 (講談社BIZ)作者: 田中秀臣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/02/21メディア: 単行本購入: 9人 クリック: 303回この商品を含むブログ (60件) を見るアマゾンより本日到着。 毎度のごとく大変興味深く拝読させていただきました。詳しい感想…

もう一つの多様性―the within variety

Tyler Cowen、“The Fate of Culture(pdf)”(Wilson Quarterly)*1 The argument that markets destroy culture and diversity comes from people across the political spectrum.・・・・ Duke University's Fredric Jameson sums up the common view:“Th…