2006-01-01から1年間の記事一覧

自然失業率の成長循環仮説

アカロフ・中谷巌命題(=長期的にも(あるレンジの範囲内であれば)インフレと失業率のトレードオフ(=右下がりのフィリップスカーブ)が存在する)について田中先生より頂戴しました貴重なコメントを改めてエントリーさせていただきます(二度目になりま…

公平賃金仮説をたずねて 〜その2〜

George A. Akerlof, William T. Dickens, and George L. Perry、“Low Inflation or No Inflation: Should the Federal Reserve Pursue Complete Price Stability?”(August 1996;The Brookings Institutions HPより)。公平賃金仮説かつアカロフ・中谷巌命…

慣習の力

間宮陽介著『モラル・サイエンスとしての経済学』より、公平賃金仮説に関連する箇所を少しばかり引用。少なくとも短期的に見た場合、現実の貨幣価格を安定化させるのは習慣(habit)の力をおいてほかはない、と彼(=H・タウンシェンド)はいう。・・・「正常性」あ…

インフレによる損失

現実には個々の貨幣賃金の下落をもたらすことなしに、たとえば(効率性の観点から望ましいと思われる)相対賃金の変化を容易にするという点で、低率のインフレーションは、少なくとも時には実際に長所をもつことさえも認めうる。しかし、この長所自身も、そ…

公平賃金仮説をたずねて(補足)

ちょっとばかり余計な補足をば。(相対)賃金体系が公平であると感じられるためには慣習的な是認を得ている必要がある、とのことですが、これは長期間にわたる物価安定が実現されている(ないしは安定したマクロ経済環境が維持される)状況において公平な賃…

公平賃金仮説をたずねて

大部分の労働市場、そしてすべてのかなり重要な労働市場は、規則的である(=長期的、継続的な関係の上に成立している、という意味;引用者注)。さて、規則的雇用においては、単に効率という点からいっても、雇用者と被雇用者との双方が、両者の関係になに…

公平賃金仮説文献目録 〜その2〜

公平賃金仮説というか、アカロフ・中谷命題というか、(ある正のインフレ率の範囲内において)負の勾配をもつ長期フィリップスカーブについてというか、・・・とにかくウェブ上で読める(先の3つの議論に関係する)論文を集めてみました(もちろん全部読ん・…

公平賃金仮説文献目録

田中秀臣(1998)「高田保馬とJ. M. ケインズ」(上武大学商学部紀要9巻2号)田中秀臣(1998)「高田保馬の勢力経済学論争」(同10巻1号)根岸隆(1994),“Bohm-Bawerk and Shibata on Power or Market”, Discussion Paper Series(青山学院大学国際政治経…

最後のIS-LM論

IS-LM分析の生みの親として名高い(悪名高い?)ヒックス。彼がIS-LMを主題として論じたのは生涯で4回(私が知っている範囲内では)と意外と少ない。“Mr. Keynes and the Classics”/“The Classics again”(この二つの論文はともに『貨幣理論』(Critical Ess…

IS-LMの使用法

前回続き。IS-LMへの批判について。根井雅弘著『「ケインズ革命」の群像』ではIS-LMに対する2つの批判(IS-LMがケインズの重要な側面を捨象している点を問題視するもの)が取り上げられている。第一はパシネッティによるもので、IS-LMでは変数間の関係が相互…

諸々の「ケインズ革命」

根井雅弘著『「ケインズ革命」の群像』を読む。1936年以前に経済学者として生をうけていたことは幸いであった―然り。しかもあまりにも以前に生まれていなかったことが!暁に生きてあるは幸いなりされどその身若くありしは至福なるべし『一般理論』は、南海島…

既得観念としてのIS-LM

引き続きLaidlerの論文より。Many economists and some philosophers of science share what could legitimately be called Panglossian view of the losses that accompany the move towards more formal models.Kitcher(1993), for example, has argued, i…

罪深きIS-LM

David Laidler(with Roger E. Backhouse)、“What was lost with IS-LM?(pdf)”(Laidlerホームページより)。IS-LMモデルは現実経済の重要な側面−経済活動は時間を通じて行われる営為であるということ−を捨象してしまったがために、経済学の更なる発展へ…

流動性のワナ

貨幣需要の投機的動機=貨幣と「債券」(コンソル債)間の資産選択の問題、について(堀内昭義著『金融論』、p140〜144参照)。コンソル債(確定利付き債)の流通価格;P=cF/i (F:額面価格、c:クーポン率、i:利子率(最終利回り))コンソル債を1年間…

IS-LM再論

IS-LMモデルは物価一定の短期の仮定の下で、財市場と貨幣市場の均衡分析をおこなうものである。IS関係は投資=貯蓄という財市場のフロー均衡の状態を記述する。利子率の減少関数である投資と所得の増加関数である貯蓄は、財市場における所得の変動によって均…

長期金利と金融政策

バーナンキFRB議長新スピーチの概要。Reflections on the Yield Curve and Monetary Policy(Before the Economic Club of New York,March 20, 2006 )http://www.federalreserve.gov/BoardDocs/speeches/2006/20060320/default.htmFRBによる今般の(2004年…

ケチャップ皇帝の初仕事

2月15日の水曜日、ケチャップ皇帝ことベン・バーナンキさん(52歳)が米下院金融サービス委員会において証言を行い、FRB議長としての初仕事を難なくやり遂げたとのことです。Testimony of Chairman Ben S. Bernanke(Semiannual Monetary Policy Report to t…

世界経済の新皇帝

一つの時代=「the Greenspan era」(A.Blinder, R.Reis、“Understanding Greenspan Standard(pdf)”)が終焉しようとしている。1987年以来約18年間の長きにわたり(この間米国大統領の座はパパブッシュ→クリントン→子ブッシュ、の3人が務めあげている)、FRB…

4つの失策

Ben S. Bernanke,“Money, Gold, and the Great Depression”の要点メモ。To support their view that monetary forces caused the Great Depression, Friedman and Schwartz revisited the historical record and identified a series of errors--errors of …

人災としてのGreat Depression

“Study of Great Depression shapes Bernanke's views”田中先生が言及されていたウォールストリートジャーナルの記事(たぶん)。The Depression, he contends, has taught the importance of avoiding both deflation -- that is, generally falling prices…

ベルナンケ→バーナンケ→バーナンキ

色々貼り過ぎてわけがわからなくなったんで、バーナンキ自身について知りたいというお方のための些細な情報提供は別立てで。ネット上で(日本語で)読めるバーナンキの論文“日本の金融政策に関する考察”(pdf)。田中秀臣の「ノーガード経済論戦」(「バーナ…

バーナンキ! バーナンキ!

バーナンキのFRB議長指名を記念して関連リンク先をご紹介。 Brad DeLong’s Semi-Daily Journal;Bernanke as Inflation Fighter http://delong.typepad.com/sdj/2005/10/bernanke_as_inf.html バーナンキがインフレ許容的であるというのは全くの誤解である。…

Christierninというヒト

Thomas M. Humphrey、“Classical Deflation Theory”(Economic Quarterly, Vol. 90 No. 1, Winter 2004)Absent in much of the recent worry over falling prices is the recognition that deflation is hardly a new topic or a new event. Classical (cir…

裁量と規律の間

表題からdiscretion、rule→time inconsistencyと連想した方は早とちり。話は70年前に遡ります。ネタ元は以前紹介した竹森教授の「世界デフレは三度来たる」(講談社BIZより間もなく刊行予定。上・下の二巻組み)。深井英五。1901年に日銀に入行し、1922年に…

歴史の教訓

東西冷戦の終結に伴い、東側諸国が次々と世界経済へと参入した結果として(あるいは技術革新の著しい進展によってというパターンもあり)世界的な過剰供給状態に陥った。安価な労働力を背景とした中国による輸出攻勢を主力として割高な日本の物価が国際経済…

Foolproof Way

●Lars E.O. Svensson,“Monetary Policy and Japan’s Liquidity Trap(pdf)”(September 2005;スヴェンソンHPより)。 日銀によるゼロ金利政策/量的緩和政策は将来の短期金利の低下予想ないしは長期金利の低下には寄与しているかもしれないが、将来の期待…

オールド・ケインジアンの言い分

●James Tobin, “Keynesian Models of Recession and Depression(pdf)”(コウルズ財団HPより。Tobinの他の論文も多数存在、CassやKoopmansのラムゼイモデルに関する論文や岩井先生の論文(不均衡動学やら)なんかも読めたりする)。 The real issue is not …

洋の東西を問わず

「清算主義」的な考えというのはある種の普遍性を有しており、洋の東西を問わず人々を魅了するようである。Krugmanは“The Hangover theory”という論考の中で、オーストリア学派の景気循環論の背後に流れる清算主義的な世界観の匂いを嗅ぎ取り、批判を加えてい…

金では買えないもの

●The gold standard and the Great Depression(Econbrowser by James D. Hamilton) Under a pure gold standard, the government would stand ready to trade dollars for gold at a fixed rate. Under such a monetary rule, it seems the dollar is "as …

理論に基づく政策提言

Pavanelli論文続き。自らの予測を裏切る形で進行する(“暗黒の木曜日”以降の)株価の下落傾向を前にしてもフィッシャーは依然として(1931年頃まで)楽観的な見解を有していた。 In 1930 and 1931 Fisher remained basically optimistic about the prospects…