「バーナンキvs.Fedボーグ」

●Matthew O'Brien, “Bernanke vs. the Borg: A Short History of the Fed's Amazing Transformation”(The Atlantic, October 1, 2012)Macro and Other Market Musings経由。Fedボーグに取り込まれたかに見えたバーナンキ議長は実のところはバーナンキ教授…

Michael Bordo「通念を疑う〜金融危機を伴う景気後退の後に続くのは弱々しい景気回復か?〜」

●Michael Bordo, “Financial Recessions Don't Lead to Weak Recoveries”(Wall Street Journal, September 27, 2012)Historinhas経由。 金融危機を伴う景気循環の方が金融危機を伴わないそれよりもプラッキングモデルの当てはまりがいい(=景気後退の度合…

「量的緩和は有効です−やり方次第では」

●Adam Posen, “The Use and Limits of Monetary Policy”(at the China-US Economists Symposium, China Finance 40 Forum, May 8, 2012)「アダム・ポーゼンが「量的緩和は無効だ」と認めた」との噂を耳にしたのだけれど、↑の論説によると・・・あれ?(本…

「ザ・日銀の番人」の新著を購入

日本銀行が「デフレの番人」だとすれば、そのような日銀の「デフレの番人」ぶりを長きにわたり厳しく批判し続けてこられた岩田規久男氏は「日銀の番人」(言い換えれば、『「デフレの番人」の番人』)だと言えよう。日本銀行デフレの番人 日経プレミアシリー…

ローマー夫妻の講義「マクロ経済政策を学ぶ 〜大恐慌から大不況まで〜」

Econ 134: Macroeconomic Policy from the Great Depression to the Great Recession(Instructors: Christina Romer and David Romer,Spring 2012) 講義スライドを眺めるだけでも勉強になる(例えば、「Lecture 12:The Zero Lower Bound in Practice(pd…

タバロック「正義の成長と経済の成長」

●Alex Tabarrok, “The Growth of Justice”(Marginal Revolution, May 9, 2012) 正義(Justice)は経済の成長にとって重要な要素の一つである。自らの生命や自由、財産が恣意的に(自らの意思に反して)略奪されたり破壊されたりするかもしれないと内心ビク…

ポーゼンへのインタビュー:「金利が低いのは嫌だ、と感じるかもしれませんが、私の母親のように退職後に貯蓄を投資に回して生計を立てている人々にとって、もし金利が現在のように低い水準にまで引き下げられていなかったとしたら状況はずっとずっと悪いものとなっていたことでしょう。」

●“Posen: Millions of Europeans face long slog”(CNNMoney, interviewd by Kim Clark, May 9, 2012) 個人的に興味をひかれた箇所を抜粋して訳してみました。 質問:アメリカにおいてもそうですが、イギリスやヨーロッパにおいても、財政赤字の問題をめぐ…

「バーナンキの自己評価を検証する;1999年のバーナンキと2012年のバーナンキ」

●Brad DeLong, “Assessing Ben Bernanke's Claims That He Has Not Changed His Mind since 1999 on the Power and Desirability of Expansionary Monetary Policy at the Zero Lower Bound”(Grasping Reality with the Invisible Hand, April 26, 2012) …

ロドリック「アイデアと利害 〜利害を形作るアイデア〜」

●Dani Rodrik, “Ideas over Interests”(Project Syndicate, April 26, 2012) Interests are not fixed or predetermined. They are themselves shaped by ideas – beliefs about who we are, what we are trying to achieve, and how the world works. Our…

大恐慌に関するケインズ以前の貨幣理論 〜ホートレーとカッセルはなぜ無視されたのか?〜

●Ronald Batchelder and David Glasner, “Pre-Keynesian Monetary Theories of the Great Depression: What Ever Happened to Hawtrey and Cassel?” Abstract: A strictly monetary theory of the Great Depression is generally thought to have originated…

「「流動性の罠」の罠 〜「流動性の罠」の政治経済学〜」

久しぶりに会った知人とランチ。そこでの会話をまてめてみる(といっても、相手が一方的に喋っていたわけですがw)。 himaginaryさんのブログ読んだ? 「わかりはじめた1930年代のレボリューション」。アイケングリーンさすが(もちろんhimaginaryさんもさ…

「大恐慌に学ぶ 〜クリスティーナ・ローマーが選ぶこの5冊〜(2/2)」

●“FiveBooks Interviews:Christina Romer on Learning from the Great Depression”(The Browser, interviewed by Eve Gerber, February 17, 2012;その1はこちら)。その1とその2をまとめたものをScribdにアップ。 質問者:ここまでは「何が大恐慌を引き起…

「大恐慌に学ぶ 〜クリスティーナ・ローマーが選ぶこの5冊〜(1/2)」

●“FiveBooks Interviews:Christina Romer on Learning from the Great Depression”(The Browser, interviewed by Eve Gerber, February 17, 2012)2回に分けて訳す予定。この1/2には後々3番目の本(バーナンキの『大恐慌論集』)に関する質疑応答の訳も含…

「2%じゃ不十分」

●Paul Krugman, “Two Percent Is Not Enough”(The Conscience of a Liberal, January 26, 2012)の訳。コーエンのTED講演の訳も残すは1回。焦らすわけではないですが、クルーグマンの訳を一回挟みます。1月25日(アメリカ時間)に開催されたFOMCの決定(こ…

「ストーリーを疑う;ストーリーとうまく付き合う方法(4)」

コーエンのTED講演の訳続き(その(1)/ その(2)/ その(3))。ストーリーが抱える第3の問題点(「市場で(広告などのかたちをとって)広く流布したり政治家が声高に語るようなストーリーは一定のバイアスを抱えている可能性が高い」)について。次の(5…

「ストーリーを疑う;ストーリーとうまく付き合う方法(3)」

コーエンのTED講演の訳続き(その(1) / その(2))。ストーリーが抱える第2の問題点(「ストーリーは時に相反する複数の機能を果たす」)について。 次に、ストーリーが抱える第2の問題に移りましょう。私たちは一度に−あるいは一日のうちに、あるいは一…

「ストーリーを疑う;ストーリーとうまく付き合う方法(2)」

コーエンのTED講演の訳続き(その(1)はこちら)。ストーリーが抱える第1の問題点(「ストーリーはあまりにもシンプルすぎる」)について。 さて、それではストーリーにどっぷりと寄りかかって思考することにはどのような問題があるのでしょうか? 多くの人…

「セントラルバンカーに告ぐ。いつまでもぐずぐずするな。行動せよ。」

コーエンの講演の訳の途中ですが、一回休憩を挟む感じでポーゼンの論説を訳してみたり。●Adam Posen, “Central Bankers: Stop Dithering. Do Something”(New York Times, November 20, 2011) アメリカ経済も世界経済もともによく知られた障害に直面しつつ…

「ストーリーを疑う;ストーリーとうまく付き合う方法(1)」

コーエンのTED講演を訳してみる。5回くらいに分けて訳す予定。所々こちら側で勝手に言葉を補ったり付け加えている箇所もあるのでそのあたりよろしゅう。 何の変哲もない普通の時代にあっては経済学者のブログが大きく注目されることはおそらくないでしょう。…

ストーリーを疑う;ストーリーとうまく付き合う方法(要点まとめ)

タイラー・コーエンが2009年11月5日に行ったTED講演。講演の主要なテーマは「ストーリー(あるいはストーリーを通じて思考すること)の危険性」。以下のブログエントリーで講演内容が文字に起こされているので(ただし英語)興味のある向きは参照されたし。●…

Jennifer Roback 「ジョージ・オーウェルの経済思想」

●Jennifer Roback(1985), “The Economic Thought of George Orwell(JSTOR)”(American Economic Review, Vol.75, No.2, Papers and Proceedings of the Ninety-Seventh Annual Meeting of the American Economic Association (May, 1985), pp.127-132) …

Douglas Irwin 「大不況の予見者? 〜戦間期の金本位制に対するカッセルの分析〜」

●Douglas A. Irwin(2011), “Anticipating the Great Depression? Gustav Cassel’s Analysis of the Interwar Gold Standard(pdf)” <要約> 大不況(Great Depression)に対する知的な反応(当時の経済学者が大不況に対してどのような反応を見せたか)は…

「どうして貨幣に対する超過需要はそこまで重要なんでしょう?」

●Nick Rowe, “Why an excess demand for money matters so much”(Worthwhile Canadian Initiative, May 02, 2009) 例えば、ここでアンティーク家具に対する超過需要が存在すると想定することにしよう。アンティーク家具(の売買)はGDPの一部として計上さ…

「「しかしながら、需要はどこからやってくるのでしょう?」 〜称賛すべきオールドケインジアンの洞察〜 」

●Nick Rowe, ""But where will the demand come from?" In praise of older Keynesians"(Worthwhile Canadian Initiative, February 04, 2011) 不景気のたびに尋ねられる質問がある。景気が回復するためには需要の増加が必要であるが、「しかしながら、需…

「バランスシート不況」

「バランスシート不況」を話題にした海外記事のうち個人的に目についたものをメモ。気が向いたら(まだ訳されていない記事のうち)どれか訳す予定。私の気が向く前にどなたかが訳していただいても一向に構わない・・・というか、むしろどなたか訳してくださ…

「日本経済が「Lost Decade」に陥ることを回避する上で、日本の政策当局者は20年前の時点でどういった手段の採用を考慮に入れるべきだったのでしょうか?」

●“In his recent Financial Times column, Larry Summers compares the U.S. economy today to the Japanese economy in the 1990s. Twenty years ago, what steps should Japanese policymakers have considered that would have helped avert the "Lost De…

サムナー「「スラック」の推計に基づいて金融政策を決めてはいけない」

●Scott Sumner, “Don't base monetary policy decisions on estimates of "slack"”(The Economist, June 28, 2011) BIS(国際決済銀行)が次のような主張を展開している。構造的失業率(structural unemployment)が高い水準にあることを踏まえると、世界…

Josh Hendrickson 「流動性の罠」

●Josh Hendrickson, “Liquidity Traps”(The Everyday Economist, May 9, 2011) 「流動性の罠」の唯一の有意義な定義は、「流動性の罠=人々が貨幣に対して飽くなき需要を抱くような状況」というものである。この定義にしたがうと、「流動性の罠」の下では…

ドル安恐怖症

●Paul Krugman, “Falling Dollar Phobia”(The Conscience of a Liberal, May 4, 2011) 世の経済・社会問題に熱意をもってマジメに取り組む人々(Very Serious People:以下、マジメな人々)のその見事な手腕、日常生活の中から我が国を苦しめている深刻な…

微修正マネタリスト・サムナーに対する異議申し立て

●J. Bradford DeLong, “In Which I Protest at a Little Monetarist Revisionism by Scott Sumner…”(Grasping Reality with Eight Tentacles, February 13, 2011) スコット・サムナー(Scott Sumner)がこんなことを書いている。 隙間なんて気にするな(Do…